楽しい労働判例研究/社会保険労務士 田中事務所 代表 田中 晴治
昨年8月から、「固定残業代」「休職後の試し出勤」「マタハラ」「パワハラ」などの最新労働判例を取り上げて、「労働判例研究会鹿児島2019」という自主研究会を1カ月に1回開催している。当初は鹿児島県内の社会保険労務士10数人程度での開催を考えていたが、予想を超えて、鹿児島をはじめ熊本、宮崎、長崎、大分の各県の社会保険労務士、また最近では弁護士の方々も参加され、現在の登録メンバーは40人近くとなった。
「マタハラをめぐる問題」をテーマにジャパンビジネスラボ事件などを取り扱った昨年12月の研究会には、指導いただいている熊本大学大学院の紺屋博昭教授を通じて、大阪大学の水島郁子教授をお招きするなど内容的にも大変充実したものとなっている。
このような研究会の立上げを思い立ったのは、前年度に熊本県社会保険労務士会の研究会に参加させていただいたからである。鹿児島からの参加は私1人だったが、他に九州各県の社労士が参加し、非常に楽しく充実した時間を過ごすことができ、このような研究会を鹿児島でも開催したいと考えた。
紺屋先生を指導・進行役に、講義形式ではなく、紺屋先生と参加者との対話形式で進められ、基本的に全員が何らか自分の意見を述べ、相互に意見を交換するというフラットな進行である。
各回、3時間で基本的に1つの判例を検討するが、複数の判例を取り扱うこともある。判決文の全文を参加者に事前配布し、各自それを読んでくることが前提である。
冒頭に事件の概要と裁判所の判断内容を確認した後、紺屋先生の設問に沿って、判決に対する各自の意見、実務に及ぼす影響、社労士としての対応等について議論が行われる。紺屋先生と参加者との対話により議論が始まるが、次第に参加者の自由発言となる。
研究会は、誰かの見解を正解とすることも、紺屋教授から正解が示されることもなく、正解は各自に委ねられる。そのような研究会が実務に役立つのかという声も聞こえてきそうであるが、参加者は毎回真剣に議論し、楽しんでいる。結局、参加者は、顧客からの質問に自分で答えを出し、それを自分の言葉で語る訓練をしているのであり、現場では顧客との対話を通じて、研究会で学んだ労務管理の手法をフィードバックしているのだと思う。
研究会への参加者が増えることにより、全員発言するということが難しくなるのが悩みでもあるが、より多くの方に判例研究の意義と楽しさを知ってほしいと願っている。
社会保険労務士 田中事務所 代表 田中 晴治【鹿児島】
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