【助言・指導 あっせん好事例集】通勤の便悪いと配転拒否 所属部門全体が遠隔地に引っ越し
社内のシステム部門が、執務環境対策等の必要から、本社とは離れた場所に引っ越すことに決まりました。しかし、部員の1人が「通勤時間が長くなる」などの理由で受け入れません。「元から配転を希望していた」ので、この機会に本社内の他部署に移りたいと主張します。両者の意見は平行線をたどり、結局、紛争調整委員会のあっせんに委ねられることになりました。
当事者の主張
従業員
入社以来、本社ビルで勤務し、今後も同じ場所で働き続けられると思っていました。新しい事務所では、通勤時間が1時間長くなるなど労働条件が大幅に低下します。
そもそもシステム部門内では、上司・同僚のいじめを受けていて、他部門への配置転換を求めていましたが、受け入れられなかった経緯があります。この問題は、本社内の異動によりスムーズに解決できるはずです。
事業主
今回の移転は部門全体を対象とするもので、例外なし、所属部員全体の配転を予定しています。
通勤時間については首都圏では通常の範囲内で、時差通勤の求めがあれば認めるつもりでいます。また、いじめ・嫌がらせ等の事実は確認されず、指示・助言を嫌がらせと取り違えているだけではないかと思います。
あっせんの内容
今回は「転勤」ではなく、通勤時間の長さが問題となっていますが、この点については、判例でも「通勤2時間以内は通勤困難といえない」という判断基準が示されています。
いじめ・嫌がらせの事実は立証されず、本人も「できるだけよい条件で退職」という意向を示しているので、退職条件に関する妥協点を探る方向で解決を促します。
結果
退職条件は以下のとおりとすることで、両者が合意文書を作成しました。
・離職票上の退職理由を退職勧奨とする。
・退職日は有給休暇を完全に取得し終わった日とする。
部員側の「遠い事務所に通勤してまで、会社に居続ける意味はない」という本音をくみ取った形の結果といえます。