【ひのみやぐら】 高齢者の転倒災害防止へ
前回号で主要労働局の重点施策を紹介したが、今年度は本格的に高齢労働者の対策に力を入れていくことになる。わが国の職場では高齢化が進んでいることから、従来から対策を進めてきたわけだが、今年3月に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」が策定され、明確な指導方針が示されたことによる。
とくに施策では、災害発生件数が最も多い「転倒」への対策に重点が向けられている。同ガイドラインには職場環境の改善として「視力や明暗の差への対応力が低下することを前提に、通路を含めた作業場所の照度を確保するとともに、照度が極端に変化する場所や作業の解消を図ること」「階段には手すりを設け、可能な限り通路の段差を解消すること」「床や通路の滑りやすい箇所に防滑素材(床材や階段用シート)を採用すること。また、滑りやすい箇所で作業する労働者に防滑靴を利用させること。併せて、滑りの原因となる水分・油分を放置せずに、こまめに清掃すること」とハード面の対策を指示しており、この件はまさに転倒防止の基本的対策といえよう。
具体的に床へのアプローチで考えてみる。床には、段差や凸凹があってはならない。高齢者になると歩行する際、足が上がりにくくなる。畳の部屋で縁につまずいたという経験はないだろうか。高齢になるとわずかな凸凹でもつまずきの原因になるのだ。もっといえば、まったく平坦な場所でも転ぶ人はいる。玄関に泥除けマットを敷いている事務所なども見かけるが、意外とつまずきや滑りの原因になっていることが少なくない。
また、床は汚れたままにしない。人間は汚いものに目を背ける習性がある。床が汚いと目をそらし、くぼみや段差、滑りの原因となる水や油などに気付きにくくなる。適正な照度が保たれたきれいな床を維持することは、転倒リスクを少なくすることにつながる。
今号特集Ⅰでは山崎製パン横浜第二工場の転倒防止対策事例を紹介した。行政が高齢者対策に力を入れるなか、同社が進める「見える化」や安全衛生教育は職場改善のよいお手本になる。