【主張】雇用維持からV字回復を
「緊急事態宣言」が全国的に解除され、日本では新型コロナウイルスの制圧に成功した。世界的にみてもその被害は最小限に抑えられた。しかし、真価が問われるのはこれからである。大手・中小を問わず、すべての企業は可能な限り雇用維持に努力し、それを基盤として経済のV字回復を実現しなければならない。経済活動再開に向けた消費の維持・拡大にとって、政府の役割は大きい。経済対策で世界に後れをとれば、再び厳しいデフレ状態に陥る。
日本における新型コロナウイルスの被害は、世界的にも最小限に留めることができた。5月末時点の死亡者は800人台で、欧米や中国などと比較して桁違いに少なく、抑え込みが成功したのは明らかだ。当初から感染検査数を少数に抑え、医療崩壊を徹底して防いだことが最大の勝因である。世界的にも「ジャパン・ミラクル」と称賛され、政府の対応が概ね正しかったことを証明している。
肝心なのは今後である。より厳しい休業解除基準を課したことで、経済活動再開に遅れが出る可能性がある。「緊急事態宣言」などの影響により100万人超の失業者が発生する恐れもある。雇用情勢の大規模崩壊を食い止めて、早期立ち上がりをめざすことが絶対に必要だ。
V字回復実現の大前提となるのが、大幅な落ち込みが予想されるGDP(国内総生産)の穴埋めである。昨秋の消費税増税の影響も考慮しなければならない。仮に年間10%の減少を予想するなら、ほぼ55兆円の穴埋めができないと、国民全体の生活レベルは大きく低下せざるを得ない。その結果として、消費減退が進み、再びデフレスパイラルに陥るだろう。
令和2年度の1・2次度補正予算では、合せて60兆円近い国債発行が予定されている。当初、予想されていた規模を超える財政出動であり、安倍政権の決断を称賛したい。雇用の維持・拡大にとって、政府の財政出動が唯一の頼みの綱だからである。
今秋の臨時国会で、第3次補正予算を組み、再度財政出動を行えば、V字回復への環境が整うと考えたい。