手続き対応から業務発展/富田謙社会保険労務士事務所 所長 富田 謙
1982年(昭和57年)に登録してから37年、社会保険労務士制度も社会の流れとともに大きく変貌を遂げてきた。27歳で開業し、全国社会保険労務士会連合会の初代会長である中西實会長(当時)に県会の総会終了後の懇親会でお会いした時、「若いのがいるじゃないか。君、これからは3号業務だよ、頑張りたまえ」と声を掛けていただいたことが強く印象に残っている。
今では3号業務の重要性を多くの社会保険労務士が認識しているが、私に至っては、3号業務が今後の事務所経営においていかに重要な業務かを37年前に示していただいていたのである。しかし、開業間もない私は日々の業務に追われ、中西先生のご忠告をいつの間にか頭の片隅に追いやっていた。
3号業務については、社会保険労務士法において、「事業における労務管理その他の労働に関する事項および労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、または指導すること」と定義されている。
相談・指導としては、顧問先の日常的に発生する軽微な労務相談から、人事考課制度、退職金制度の立案、解雇事案の処理立案など既に日常の業務にもなっているが、顧客との契約形態やかかわりの密度によっては、至らないことがあることも事実である。
社会保険労務士だからできる、コンサルタント業務がある。
ある事業主から欠勤が多い従業員について欠勤を減らすための相談を受けたことがあった。タイムカード、賃金台帳、有給休暇取得簿をみると、他の従業員と比べても特別に欠勤や、年次有給休暇の取得が多いわけではない。その事実を事業主に報告しても納得していただけない。
そこでタイムカードを精査してみると、年次有給休暇の取得日、欠勤日が業務多忙の休日の翌日または月末近くの第4水曜日に集中していることが分かった。
事業主からすれば多忙な日に欠勤することにより、他の従業員と比べ欠勤が多いと印象付けられていたことが判明した。その後、この従業員は、欠勤日に母親を病院に送迎していたことが分かり、事業主も納得した。事業主と従業員のコミュニケーション不足が原因だった。
社会保険労務士は、日常の手続き業務から発展する業務がある。賃金計算や離職票の作成から賃金未払い事案を指摘し、新たな賃金制度を提案する業務である。
37年過ぎた今では1、2号業務の先に3号業務があることを心に刻んでいる。
富田謙社会保険労務士事務所 所長 富田 謙【愛知】
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