【今週の労務書】『教育は何を評価してきたのか』
2020.06.20
【書評】
評価が多様化を阻む
OECDが実施した「国際成人力調査」によると、日本の16~65歳の読解力、数学的思考力、問題解決能力はいずれも世界一となっている。日本人の読み書き、計算、問題解決などの汎用的なスキルは、世界的にみて高水準にある。しかし、時間当たり賃金や1人当たりGDPは先進国の中で下位にあり、スキルが経済の活力につながっていないのが現状だ。
著者はその原因を教育における「能力」「資質」「態度」という言葉にあるのではないかと説く。明治から現代まで、これらの言葉がどのような使われ方をしてきたのかを振り返り、その結果として評価が単線化し、多様化を阻む要因になっていると訴えた。
「能力」「資質」「態度」は人事評価でも用いられる尺度だ。教育が陥った袋小路は人事にとっても他人事ではない。評価制度を考えるヒントにしたい。
(本田由紀著、岩波書店刊、TEL:03-5210-4000、840円+税)
令和2年6月22日第3262号16面 掲載