【主張】「雇用類似」に労災補償を
本紙報道によると、厚生労働省は、「雇用類似」の働き手への労災保険特別加入制度の適用に向けた検討を本格化させた(7月6日号1面参照)。「雇用類似」とは、労働基準法関連法令の適用がなく、原則として労災保険制度の保護対象ではないが、特別加入制度は積極的に開放すべきである。情報処理産業などで、有能な働き手がいかんなく力を発揮できるよう就業環境の整備を急いで欲しい。日本のデジタル技術の向上にも寄与するだろう。
労災保険制度では、業務の実態、災害の発生状況などからみて労働者に準じて保護するにふさわしい者については、特別加入を認めている。対象は、労災保険法において、中小事業主、自営業者、家族従事者などに限定し、平成29年度末時点の加入者数は合計187万人に達した。
この考え方からすれば、業務委託や請負の形式で、主に発注元事務所などで就業する「雇用類似」の働き手も十分対象となり得る。必要であれば、早急に労災保険制度を改正して、対象となる「雇用類似」の働き手の範囲を確定してもらいたい。
業務委託契約の下で就業する者の業務内容をみると、営業・販売(電話勧誘など)が最も多いが、次いで情報処理技術が24%を占めている。講師・インストラクター、デザイナー・カメラマン、各種コンサルタントなども少なくない。それぞれが、専門分野で企業に貢献すると同時に、自らの生活を支えている有能な働き手が大半を占めると考えて良い。
しかし、就業環境は十分とはいえない。情報処理技術でみると、年間収入299万円以下が48%と約半数に上る。契約単価の低さなどで、発注元とトラブルになるケースも少なくない。災害への対処としては、損害保険に加入しているのが実態である。
セーフティーネット拡充の一環として、業務中の災害を特別加入制度の対象とすれば、安心感は格段に増すだろう。社会経済全体に対する貢献度アップも期待できる。厚労省は、特別加入制度の現代化に向けて早急に検討結果をまとめてもらいたい。