【主張】コロナに対処し職務型へ
本紙13面に今年1月から半年間にわたって連載していた「日本に馴染む職務型人事賃金制度」(執筆はコーン・フェリー・ジャパン㈱)が好評だった。今春、突然噴出した新型コロナ感染症拡大の影響も多大で、職務型人事賃金制度のニーズが一気に強まった。中堅・中小以上の企業を中心に、コロナ時代に沿った人事賃金システムとして、導入に向けた検討を勧めたい。
一部大手を含め日本の大多数の企業では、未だに職能型あるいはメンバーシップ型人事賃金を運用しているのが実態である。職務能力を社内で格付けし、その資格に対応した賃金額を設定する一般的な制度だ。中小以下の企業では、職能等級すら設定していないケースが少なくない。
結果的には年齢や経験年数が中心的な処遇基準となり、年功的運用となっているのが実情で、人件費コスト増を招いたり、若い社員の挑戦意欲を阻害している。社員個々の能力向上度など、毎年客観的に測定できるものではない。近来になって、職能資格制度がほとんど機能しなくなった最大の要因といえよう。
職務型あるいはジョブ型人事賃金制度とは、年功的運用に陥った日本企業を再生させるツールとなるだろう。職務の重要度などに合わせて等級格付けを行い、等級ごとに人事評価し、報酬額を設定するものである。社員個々の職務内容が明確となり、会社貢献度に応じた処遇に結び付けることができる。
過去には、行き過ぎた成果主義が広まり、職務型への信頼性が失われる場面もあったが、本紙連載のとおり、「日本に馴染む」システムに改良すれば、軋轢も少なく有効に機能し得るだろう。
グローバル組織コンサルティングのコーン・フェリー・ジャパンが、大手企業を対象に最近実施した調査によると、約7割が職務型へ舵を切ろうとしていることが分かった。新型コロナ感染以前においても一つの流れとなっていたが、リモートワークなどが定着することによってさらに強まった。曖昧な能力評価ではなく、職務や貢献度評価がより重要となってきたのは間違いない。