【主張】休業者の再就労へ対策を
厚生労働省がまとめた5月分の一般職業紹介状況などによると、有効求人倍率1.20倍、完全失業率2.9倍となった。同月のほぼ全期間にわたって「緊急事態宣言」「休業要請」が発令されていたにもかかわらず、この程度の落ち込みに留まったのは、政府および厚労省の雇用維持政策が功を奏したと考えられる。
今後重視すべきは、経済活動活性化に向けた刺激策の強化と休業者の雇用維持政策である。明らかになってきた新型コロナウイルス感染症の特性を踏まえた経済活動拡大に専念すべきである。
6月後半から再び新型コロナ感染拡大の様相にあるが、政府は再度の「非常事態宣言」の発令には消極的であり、これを支持したい。東京都も新たな指標を打ち出し、深刻度の評価に当たっては総合的判断をするとしている。新型コロナの特性が判明してきた現時点と数カ月前の事情とは異なっている。評価基準もこれに合わせて変遷するのは当然である。
政府や東京都そして国民全体としても、これ以上の経済破壊を恐れている。新型コロナでは、日本において約1000人の犠牲者を出したが、経済全体へのダメージはこれを上回る計り知れないものとなった。さらなる経済活動の規制強化は、どう考えてもバランスが悪い。政府は、新型コロナの特性を踏まえたうえで、経済活動活性化に全力を挙げてもらいたい。引き続き大規模な経済刺激策を貫徹すべきである。
雇用維持にとって大きな役割を担ったのが、雇用調整助成金であった。当初から素早い支給手続き緩和と対象拡大、助成額アップが段階的に実行され、功を奏したとみられる。中小事業者や労働者に、一定の安心感を醸成したのは間違いない。
しかし、問題はこれからである。休業者が400万人を超えているのが現状だ。今後もできる限り休業状態を維持しながら、早期に再就労につなげる努力が必要である。雇調金の特例再延長とともに、再就労・再就職をバックアップする強力な政策が求められる。これ以上の失業率悪化を食い止めなければならない。