企業へ継続的な関与を/古山社会保険労務士事務所 古山 幸夫
当職が、社会保険労務士として開業したのは平成13年8月、あと1年でかれこれ20年が経過しようとしている。経験なし、コネなし、収入なしからのスタートであり、今思えば無謀な感じもするが、良い思い出でもある。
開業当初と現在では、社会における社会保険労務士の認知度は隔世の感がある。
当時は社会保険労務士と名乗っても、資格名を知らない人が多く、知っていたとしても保険会社の関係者と勘違いをされることも多かった。また、「それで食べていけるのか」と質問されることも多々あり、不安を感じることもあった。
現在はというと、消えた年金記録などの諸問題、長時間労働対策をはじめとして、社会的な認知度も浸透してきている。
それにつれて、事務所としての仕事量も随分増えていることを実感している。また、行政協力をはじめとして、社会保険労務士会に対する委託事業も当時とは比較にならないほど増加している。
当職の開業当初における行政協力は労働保険適用促進事業で、民間業務は金融機関での年金相談くらいだったであろうか。
それが現在は、働き方改革、36協定、街角の年金相談センターをはじめとする行政協力や裁判所調停委員の公職への就任依頼など、引きも切らない状況となり、追い風が吹いているような状態である。このような状況から、たとえ開業当初であっても社会保険労務士としての収入は安定しているのではないかと思われる。
このような状況は好ましいことではあるが、いつまでも続くのか否か、不安な面もあるのではないか。当職のように、開業初期に収入がないということは、当然ながら仕事量ゼロである。ということであれば、時間は大いにある。その時間を生かして、その後の業務に必要な勉強をする時間を確保できることを意味する。開業当初からある程度の仕事があれば、その時間が確保できないことも考えられる。
当職が考える開業社会保険労務士は、企業と継続的に顧問契約をして労務管理などに関与することであった。
そこで老婆心ながら危惧していることがある。
今の追い風の状況がなくなったとき、すなわち行政協力、委託事業がなくなったとき実務経験が不足したままで開業社労士としての業務を続けられるのかという点である。
これも多様化する現代の流れによるものといえるのであろうが、追い風が一過性とならないことを祈っている。
古山社会保険労務士事務所 古山 幸夫【岩手】
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