福祉業界の定着率向上へ/ 社会保険労務士法人 THINK ACT 代表社員 志賀 弘幸
2010年に社労士として開業して以来、介護福祉業界に特化し、多くの福祉経営者とお会いしてきた。
この間、福祉業界は常に低賃金・人手不足が続き、顧問先からの相談も採用・人材処遇に関するものが多い。また近年は「働き方改革」の波が福祉業界にも影響を与え、人材不足に追い打ちをかけているように思う。
介護福祉事業は中小零細企業が非常に多く、職員の労働環境が整備されていない事業所も少なくない。たとえば就業規則の整備についていえば、開業当時のまま改正事項を放置している事業所も実は多い。福祉事業は3年に1回の報酬改定があるため、介護福祉制度自体(介護保険法、障害者総合支援法、児童福祉法など)に関心を持っている経営者は多いが、労基法をはじめとする労働関係法令に対する関心は高くない。
しかし今般の働き方改革の推進で、時間外労働削減や年次有給休暇の取得の義務化など、職員からの問い合わせをきっかけに自社の就業規則を見直すという動きも出てきている。
また、この業界の特徴に「女性職員が多い」「パート職員が多い」「ホームヘルパーの平均年齢が非常に高い」「入職後1年以内の離職率が高い」「シングルマザーが多い」などがある。介護業界以外の一般企業と比較すると非常に特徴のある業界である。
実際、顧問先からは離職率を下げるために、「女性職員によって働きやすい職場とはどのようなものだろうか?」「育児休業明けの職員がスムーズに職場復帰できる計画を一緒に策定してほしい」「短時間でも正職員で勤務するための短時間正職員就業規則を作成したい」など働き方に関する提案を求められることが非常に多くなっている。人材がなかなか採用できないなかで、採用方法の検討というよりも定着率を高める方法を検討している事業所がとくに多い。
さらに最近のコロナ禍においても、介護業界の働き方や職員の意識に大きな変化が生じているように思う。
そもそも人手不足の業界であるが、このコロナ禍で職員の欠勤も増えているなかで、少人数でも現場を回さないといけないという使命感を持った人財が現れている介護現場もある。結果的に省人化になっている。厚生労働省も現在、緊急事態として人員基準の緩和策を発出している。少人数で現場を回すことで人手不足解消にもつながるのかもしれないと私も期待しているところである。
このように介護福祉業界は、私たち社労士の活躍の場が非常に多い業界だと感じる。
社会保険労務士法人 THINK ACT 代表社員 志賀 弘幸【愛知】
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