企業価値高める健康対策/社会保険労務士法人 木村事務所 代表社員 木村 辰幸
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、多くの企業では、テレワークの導入、業務激減による休業と雇用維持のための休業手当の支給、リモート会議の導入、そして社員の感染防止対策など、その対応に追われている。
社会保険労務士として開業して23年だが、これほど多忙な時期はなかったと記憶している。
休業せざるを得ない企業の対応策、それに伴う休業手当の支給方法、社員に感染者との濃厚接触の疑いが発生したといった相談や雇用調整助成金申請業務などに事務所スタッフが忙殺され、通常業務が一時期ほとんどストップしてしまった。
不況になればなるほど忙しくなるのが社会保険労務士事務所。スタッフにはそういい聞かせて、クライアントに向けた誠実な対応に気を配った。その時思ったのが、我われを頼ってくるクライアントのために事務所をダウンさせてはならないということである。一方で、事務所スタッフがもし感染してしまったら、という恐怖感から夜も寝られないほどだった。
新型コロナウイルス感染拡大を防ぎ、スタッフが感染することなく業務を継続するため、4月下旬から6月末までテレワークに踏み切った。
業務効率の低下は覚悟の上だが、スタッフの健康とクライアントへのサービスの維持のための判断だった。最近、顧問先の社長や総務担当の方々と話をしていると、やはり同じような恐怖を抱えていた方が非常に多いことが分かった。
新型コロナウイルス感染拡大のなかで、みえてきたのは企業スタンスの二極化だ。
一方は、このコロナ禍で社員の雇用維持に努め、同時に社員の健康維持に向けていち早く体制を構築した企業。もう一方は、スポットでの相談が多かったのだが、休業手当をいかにして支払わないかに知恵を絞る企業だ。
ワクチンが開発され、アフターコロナとなったとき、社員が一致団結して協力してくれる企業が今後の勝ち組になることは、目にみえて明らかだ。
「苦しいときでも反則を犯さない姿勢」。こういうことに気付かせてあげるのも我われ社会保険労務士である。
今後の企業価値は、従来の財務諸表上の指標だけで決まるものではない。社員の健康、公衆衛生を視野に入れた企業活動、取引先や関係者の安全に配慮した取組姿勢といった、第二の非財務指標も企業価値を高めるものである。そんなことに気付かせてあげられる社会保険労務士でありたいと常々思う。
社会保険労務士法人 木村事務所 代表社員 木村 辰幸【東京】
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