【主張】「6G社会」で失地回復を
厚生労働省は、Society5.0の実現に向け、IoT、センシング、ビッグデータ、AI、ロボットなどの開発を担える技術者の育成に力を入れるとしている(8月24日号1面参照)。デジタル技術社会は、絶え間なく急速な進歩を遂げているのが実態である。政府、厚労省そして主体となる企業は、2030年代に訪れる「6G」社会において世界的主導権を握れるよう、人材開発に最大限の投資と支援を行うべきである。
日本は、20年代からスタートする「5G」技術で大きく後れを取った。アメリカや中国などと比較し、5G対応の半導体技術、基地局開発などに関する特許数が格段に少なく、追従するしかなかった。
技術開発が遅れた最大の要因は明らかである。バブル経済の崩壊とリーマン・ショックがもたらした長期デフレ経済である。その間、技術開発と人材開発投資が真っ先にカットの対象となり、先細りを余儀なくされた。
誤ったマクロ経済政策が引き起こしたデフレ経済が、技術立国としての日本の地位を大きく低下させ、国力を表すGDP(国内総生産)もほとんど横ばい状態で推移することになった。今後は、人材開発投資を惜しんではならない。30年代からの6G社会をめざし、再び世界的主導権を握る必要がある。
6Gでは、5Gをさらに100倍上回る高速通信が達成され、自動車の完全自動運転やホログラム技術によるバーチャルリアリティーの飛躍的発展、ロボットの労働分野利用の拡大などが想定できる。社会の全てのサービスや労働に対する考え方が大きく変わるかもしれない。
幸いにも6Gの技術開発では、日本は決して後れを取っていない。大手通信会社など複数の企業がすでに30年代に訪れる高度社会を見据えた技術開発の動きを積極化している。政府は、令和元年度補正予算で「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」を開始し、民間から募集した12件の採択事業者に大規模な経費支援などを行う。
来る6G社会を、日本産業の失地回復のステージとすべきである。