従業員のSNS投稿による「炎上」対策の重要性について/弁護士 小山 博章
SNS利用に関する従業員研修に関する留意点
以上のような現状を踏まえると、従業員によるSNSへの不適切な投稿を未然に防ぐために、会社は、規程・ガイドラインなどの整備や従業員に対する社内研修といった事前の対応を講じておくことは、時代の要請といえます。
このような要請を受けてか、最近では、私自身、SNS利用に関する従業員研修やセミナー、規程の整備を依頼されることが増えてきました。これらは、新しい分野の対応となりますので、多くの会社担当者や弁護士・社労士をはじめとする士業の方々が暗中模索の状態であろうと思われます。私自身もまさにそのような状態ではありますが、この分野に力を入れて研究をしていますので、参考までに、私が考える従業員研修の留意点を少し述べさせていただきます。
まずは内容面です。従業員研修においては、従業員に当事者意識を持たせたうえで、危機感を煽ることが何よりも重要です。そのためには、不適切な投稿をすれば、損害賠償責任を負わされたり、刑事責任(名誉段損罪、侮辱罪、業務妨害罪等)を問われたり、懲戒処分の対象になり得たりするといった投稿者自身の責任に加えて、投稿内容によっては会社の責任も問われかねないこと、マスコミ等で報道されれば会社の信用・イメージが大きく損なわれることなどといった会社に起こり得る問題を重点的に説明する必要があります。なお、アルバイト従業員に対しては、会社への忠誠心や懲戒処分の話をしても、あまり効果は期待できないでしょう。例えば、高校生のアルバイト従業員に対して、出勤停止などの懲戒処分を話したところで、効果は薄いでしょう。そうした場合には、刑事罰があること、損害賠償請求がありうることの説明に重点を置くべきです。このように、研修の参加者層によって、内容を変えることも重要です。
また、大前提として、SNSの特殊性を説明する必要があります。特に、匿名での投稿であっても、投稿者が過去に行った他の投稿や友人・知人の投稿を合わせることによって、投稿者や、所属する会社・店舗が特定されることがあること、場合によってはプロバイダー責任制限法に基づく発信者情報の開示がなされて投稿者の住所・氏名が特定される可能性があることなどを具体的に説明して注意喚起を促すことが効果的であると思われます。研修では、「不適切な投稿」の実例(実際の「炎上」事例)を紹介することが効果的ですが、その説明するにあたって、どのような投稿内容が問題となったかだけではなく、どのようにして情報が拡散し、会社、店舗、個人が特定されたかといった点にも焦点を当てるとよいでしょう。