【ひのみやぐら】ベテランの力を生かす
少子高齢化はまだまだ続いている。近年は、高年齢者の労働災害防止のため関係各機関が注意喚起を盛んに行っているところだ。一方、健康状態には個人差があり、元気に働いている人も少なくない。現場の第一線で活躍中のベテラン労働者はたくさんおり、組織の中で頼られる存在となっている人もいるだろう。
数年前、鉄鋼業界では事故が多発した。2015年にまとめられた経済産業省の調査によると、原因はいろいろとあるものの「ベテラン層の大量退職、災害を知るベテラン層の減少など、円滑な技能継承に課題あり」を労働災害増加の要因のひとつとして挙げている。
当時は団塊世代の大量退職が背景にあり〝現場力〟の低下が問題視されていた。各社とも対策に取り組んでいたものの、途中の段階であり、ベテラン労働者がいなくなることで、逆にその重要性を再認識する結果となった。
労働人口が減少しているなか、まだまだベテラン(高齢者)労働者にかかる期待は大きい。若者にはないアドバンテージで、第一に挙げられるのは「技術を記憶している」ことだろう。従来の作業手順を身体で覚えていて、自然に動くという強みだ。長年の経験に裏打ちされたものであり、正確性が高い。慎重な行動は、ミスが少なく安全な作業につながっている。知識が豊富なのは、いうまでもない。
リーダーシップは、ベテラン労働者ならではのもの。職場の人たちをグッと引っ張り、よい雰囲気を導きだす力も持っている。こうした〝人間力〟を持っているのは、ベテラン労働者の強み。職場の安全文化構築には、欠くことのできない人材といえる。
特集Ⅰで紹介する東燃ゼネラル石油川崎工場、東燃化学川崎工場は安全を査察する「作業許可システム監査(WPA)」に取り組んでいるが、この活動に欠かせないのが、現場のベテランで査察官を務める川村さんと福原さんのお二人だ。「この人に言われたなら納得できる人材」「リーダーシップを持って効果的に監査できる」と同社では絶大な信頼を寄せられている。
世代交代が進むわが国の産業界。ベテランの果たす役割は大きい。