【主張】5判例で方向性明らかに

2020.10.29 【主張】
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 最高裁判所は、大阪医科薬科大学事件とメトロコマース事件に引き続いて、各種手当などの支給格差の不合理性を認定した日本郵便事件判決を下した=関連記事。賞与や退職金の支給格差については、「有為人材確保論」を採用したが、日本郵便事件では、手当ごとの支給要件や趣旨を重視して個別判断した結果、いずれの格差も不合理と判示している。厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」と同様の考え方だ。今回の5つの判例で正規・非正規間の待遇格差への対処の方向性がほぼ明確になった。

 賞与、退職金の支給格差を判断した大阪医科薬科大学事件やメトロコマース事件では、正規と非正規間の業務内容はおおむね共通しているものの、正規は複数店舗の統括、売上げ向上の指導、トラブル処理などの業務も担当していたことから、正規に限って退職金支給規定を設けていたことを容認した。高度な業務をこなす正社員を確保するには、より良好な待遇を確保する必要があるという考え方は頷けるものだ。

 これに対し、手当などについて最高裁は、その趣旨や要件を個別に検討して判断する必要があるとした。たとえば、年末年始勤務手当は、従事した業務の内容や難易度にかかわらず、年末年始の所定期間に勤務したこと自体を支給要件とし、金額も時間に応じて一律としていた。手当の性質や支給要件などに照らせば、非正規にも妥当するとし、年末年始勤務手当の不支給は不合理としている。

 「同一労働同一賃金ガイドライン」でも、特殊勤務手当は、通常の労働者と同一の危険度や作業環境の業務に従事する短時間・有期雇用労働者には、同一の特殊作業手当を支給しなければならないとしている。支給要件が一律である単身赴任手当や特定地域で業務に就く場合の補償として支給する地域手当なども格差を設けるべきではないと明記していた。

 業務内容を支給に当たっての重要な考慮要素とした賞与や退職金と、支給の趣旨を重視する手当などとの間で、不合理性の考え方が異なることが明らかである。

令和2年11月2日第3279号2面 掲載
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