労使紛争の早期解決へ/社会保険労務士法人 今井人事労務事務所 今井 憲之
労使紛争への社労士のかかわりについて私見を記述する。
一般的に労使紛争といえば、弁護士がかかわるものだと考えられている。ならば社労士はどうなのか。
裁判に至った場合は弁護士しか、かかわることができず、当然社労士は原則かかわることができない。しかし、裁判に移行する前の労使紛争においては社労士のかかわりが弁護士以上に必要と考える。
そこで、労使紛争の枠組みを大きく捉え、使用者、労働者の人間関係に焦点を当て労使紛争のプロセスを順序立ててみる。
第1段階(自主的解決段階)には、①「不満・利害対立」が起こる、②労働者が相談等のアクションを起こす、③「不満の高まり・さらなる利害対立」が起こる、④労働者の怒りが「苦情」となり表面化する――の4項目がある。
次いで第2段階(外部機関、ADRによる解決段階)は、⑤前述の④で和解できない場合に労働者の不満が怒りとなり「外部への反応」となる。具体的には労働基準監督署・総合労働事務所や弁護士・社労士、労働組合に相談することになる。それに続き、⑥ADRによるあっせんが行われる。
第3段階では、⑦裁判などによる解決が図られることになる。
プロセスから考えると、第1~3段階はそれぞれ解決方法に大きな違いがあり、全く別物だといえる。
第3段階の解決方法は、労働者、使用者がお互いの正当性を主張し白黒を付けることである。白黒を付けるのは裁判官である。一方、第1~2段階は、労働者、使用者が落としどころを探り、和解を模索する。いい換えれば人と人との関係の修復、つまり人事労務の力なくして解決を導くことは難しいといえる。
また、労働者、使用者の感情の変化を考えると、第1段階では、労働者の不満、利害対立が主で怒りの感情に関しては低いと考えられる。第2段階となると、怒りの感情が段々と芽生え第1段階より高くなる。第3段階になると労使ともに怒りの感情がピークとなっている。
早い段階では解決に至りやすく、労使にとっても得策といえる。怒りの感情が高くなればなるほど解決へのハードルが高くなる。第3段階に至って裁判などで使用者が勝利したとしても、企業の評判や働いている労働者の感情を鑑みると、使用者にとって敗北といえるかもしれない。
よって、労働者と使用者、企業の今後を考えても、我われ人事労務の専門家である社労士が、弁護士以上に労使紛争にかかわり、早期の解決をめざすことが必要であると信じている。
社会保険労務士法人 今井人事労務事務所 今井 憲之【大阪】
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