パワハラと労働生産性/ソラーレ社会保険 労務士法人 代表社員 大谷 雄二
2020年6月、職場におけるパワーハラスメント防止措置を事業主に義務付ける法律が施行された(中小企業は22年4月から)。
この法律でパワハラが定義されたが、ここでは簡単に「職場のいじめ・嫌がらせ」と定義する。
都道府県労働局に寄せられる民事上の個別労働紛争の相談件数は、12年度に「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が5万1670件で「解雇」を抜いて1位になってから、毎年右肩上がりに増えて19年度は8万7570件となった。ただし、この件数は氷山の一角に過ぎない。私は日本の労働生産性が低い理由の1つとしてパワハラがあり、その影響は大きいと考えている。
日本生産性本部が発表する「労働生産性の国際比較」によると18年の日本の1時間当たりの労働生産性は4744円でOECD加盟36カ国中21位、先進7カ国中最下位である。
OECD加盟諸国で1時間当たりの労働生産性が最も高いのはアイルランドの1万366円で日本の約2.2倍、6位のアメリカは7570円で約1.6倍である。
パワハラがある職場では被害者の生産性が低下するだけでなく、他の従業員も集中力やモチベーションを保てない可能性が高い。また加害者が管理職の場合、部下の指導力、育成力、冷静な判断力の欠如によって組織の生産性が低い可能性がある。さらに離職率が高く、採用と新人教育コスト負担が減らず、習熟した社員が少ないために生産性は向上しない。
それにもかかわらずパワハラを放置している企業が多い。このパワハラ防止法が日本の労働生産性の向上に好影響となることを期待している。
当法人は、自社を「生き生きと働ける職場」にする取組みで得た実体験を通して、お客様の職場を「生き生きと働ける職場」にすることをビジョンとしている。「生き生きと働ける職場」のはじめの一歩は「パワハラのない職場」である。
「生き生きと働ける職場=労働生産性の高い職場」を立証するために、毎月自社の「1時間当たりの労働生産性」を算出し比較検証している。
18年と20年(9月まで)の1時間当たりの労働生産性を比較すると500円以上増加している。仕事のやり方を変えたり、各チーム間の業務分担を調整したこともあるが、それも「生き生きと働ける職場」のお互いを支え合う人間関係から生まれた結果である。
この実体験によって「労働生産性の高い職場づくりはパワハラ撲滅から」をスローガンとして、労働生産性の向上に苦戦している企業を支援していきたい。
ソラーレ社会保険労務士法人 代表社員 大谷 雄二【東京】
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