【ひのみやぐら】AIがつくる新しい安全衛生
生産現場はもちろん、不動産、金融、輸送業など、さまざまな業界で急速に進むスマート化。政府はさらにスマート社会を進化させるため「Society 5.0」として提唱している。AIやIoT、ロボット、ビッグデータなどの革新技術を産業や社会に取り入れる新たな未来社会の姿を指し、テクノロジーによって、人々が暮らしやすい社会を構築するのが目的だ。AI、IoTなどの技術は、企業の労働安全衛生対策と密接に関係する。
労働災害件数は長期的には減少傾向にあるものの、下げ止まり感が否めない。この閉塞した状況に風穴を開けるシステムとして、大いに期待が寄せられている。改めてAIとはArtificial Intelligenceの略で、コンピューターに人間と同じように推理、判断、認識などの知的活動ができるようにした仕組みをいい、人工知能とも呼ぶ。
IoTはInternet of Thingsの略で、さまざまなモノ(産業機械、建物などのインフラ、自動車などの移動体、電子機器など)がネットワークを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、相互に情報交換をするシステムをいう。
弊紙ではこれまで、VR(仮想現実)やICT(情報通信技術)について活用事例を取り上げてきたが、今号、特集1では、熊谷組のAI制御による無人化施工を紹介している。同社では、リモート操作とAI制御を活用し、オペレーター1人でバックホウと複数台の不整地運搬車を同時に監視、操作することを可能にした。
AIやIoTを災害防止に生かしている企業は大手が中心だが、着々と増えている。このほど日本経済団体連合会のまとめた「最新技術を活用した労災防止対策事例集」(1月1日号ニュース欄既報)によると、JFEスチールでは、AIによる画像認識を活用し作業者の不安全行動監視技術を開発した。日立建機では、作業者の姿勢を自動判別できるシステムを導入。作業に適さない姿勢に該当と判別した場合、アラートを表示するというものだ。
中小企業への普及はまだまだといったところだが、安全衛生のSociety 5.0は、確実に歩きだしている。