『書方箋 この本、効キマス』の労働関連コラム

2024.12.19 【書評】
【書方箋 この本、効キマス】第93回 『孤城春たり』 澤田 瞳子 著/大矢 博子 NEW

幕末動乱期の市民は…  昨年4月のこの欄で、畠中恵『わが殿』を紹介した。江戸時代後期、借金にあえぐ越前大野藩で財政立て直しに奔走した大小姓・内山七郎衛門の物語である。  だが江戸時代後期から幕末にかけて、財政難に見舞われていたのは大野藩だけではない。多くの藩がやりくりに苦慮していた。そんな中、財政改革・藩政改革の最も有名な担い手は、備中松……[続きを読む]

2024.12.05 【書評】
【書方箋 この本、効キマス】第92回 『トニオ・クレエゲル』 トオマス・マン 著/林家 彦三

青春や芸術に限らぬ煩悶  若手の一ハナシカがこのような本を持ち出して、それも推薦し、かつ論評するという事はいささかおかしいとも思われるが、このハナシカは、元々は恥ずかしながらも小説家志望で、大学では曲がりなりにもドイツ文学を専攻し、今現在もわずかながらも文筆業を行っているということは多少の免罪符になるだろうと思う。つまりははじめに、ハナシ……[続きを読む]

2024.11.28 【書評】
【書方箋 この本、効キマス】第91回 『妻に稼がれる夫のジレンマ』 小西 一禎 著/石川 慶子

夫が転勤に同行の夫婦像  著者は日本の中枢、永田町で働いていた政治記者であったが、米国勤務となった妻に同行するため、2児を連れて「配偶者海外赴任同行休職制度」を取得して主夫となった。現地でのストレスやキャリアへの不安から仲間を集める決意をし、米国滞在中の2018年に「世界に広がる駐夫・主夫友の会」を立ち上げた。発足時には4人だったメンバー……[続きを読む]

2024.11.21 【書評】
【書方箋 この本、効キマス】第90回 『五葉のまつり』 今村 翔吾 著/大矢 博子

秀吉に仕えた裏方の苦労  戦国小説の華といえば合戦、というイメージがある。織田信長なら本能寺、徳川家康なら関ヶ原がクライマックスに用意されるのは当たり前、槍働きだの戦術だのに読者はいつも胸躍らせる。  だがちょっと待って。その戦、槍を片手に颯爽と馬で駆けるかっこいい武士だけで成り立っているわけではない。  戦をやるには準備や後方支援がいる……[続きを読む]

2024.11.14 【書評】
【書方箋 この本、効キマス】第89回 『ウナギが故郷に帰るとき』 パトリック・スヴェンソン 著/大島 健夫

自然、個人の歴史に迫る  日本最古の和歌集『万葉集』に、かの大伴家持が詠んだウナギの歌が収録されている。  石麻呂に 吾れ物申す 夏痩せに よしといふ物ぞ 鰻取り食せ  石麻呂(いわまろ)さん、夏痩せに良いというからウナギを食べなさいよ、という、ストレートきわまりない歌である。石麻呂という人は家持の友達で、スマートな体型をしていたらしい。……[続きを読む]

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