『書方箋 この本、効キマス』の労働関連コラム

2024.11.14 【書評】
【書方箋 この本、効キマス】第89回 『ウナギが故郷に帰るとき』 パトリック・スヴェンソン 著/大島 健夫 NEW

自然、個人の歴史に迫る  日本最古の和歌集『万葉集』に、かの大伴家持が詠んだウナギの歌が収録されている。  石麻呂に 吾れ物申す 夏痩せに よしといふ物ぞ 鰻取り食せ  石麻呂(いわまろ)さん、夏痩せに良いというからウナギを食べなさいよ、という、ストレートきわまりない歌である。石麻呂という人は家持の友達で、スマートな体型をしていたらしい。……[続きを読む]

2024.11.07 【書評】
【書方箋 この本、効キマス】第88回 『専制国家史論』 足立 啓二 著/濱口 桂一郎

今こそ読み返すべき一冊  習近平政権の専制的傾向がますます強まり、中国の民主化の希望が遠のくにつれ、この専制的性質が中国という国家にとって本質的なものなのではないかという問題意識が世界的に高まってきている。中国史の専門家がこの課題に挑戦し、壮大な世界史像を練り上げたのが本書だ。ただし原著は鄧小平の死後間もない1998年刊行であり、その頃は……[続きを読む]

2024.10.31 【書評】
【書方箋 この本、効キマス】第87回 『女の氏名誕生』 尾脇 秀和 著/濱口 桂一郎

膨大な驚きに満つ歴史  過去数十年にわたって夫婦別姓を巡ってさまざまな議論や訴訟が繰り返されている。今年6月には経団連が、選択的夫婦別姓の導入を要望して注目された。政治問題になってしまったこの問題について、しかしながら熱っぽく論じている人々の多くは、そもそも日本において女性の名前というものがいかなるものであったのかについて、きちんとした知……[続きを読む]

2024.10.24 【書評】
【書方箋 この本、効キマス】第86回 『エアー3.0』 榎本 憲男 著/大矢 博子

「自治区」広める狙いは?  〈「この世の中の情勢を大きく左右してるものはふたつあると思うんだ」  ふたつ? ふたつならあれとあれだろう。いまの世は、あれとあれを牛耳ったものが勝つ。あれとあれの権益を押さえるために、連中はどんな手でも使う。〉  榎本憲男『エアー3.0』の一節である。世界情勢を左右する「あれとあれ」を巡る経済サスペンスだ。……[続きを読む]

2024.10.17 【書評】
【書方箋 この本、効キマス】第85回 『あの日の風を描く』愛野 史香 著/神楽坂 淳

絵の復元作業を淡々と  女流作家である。  「女流」とあえて書くのは、この小説が「絵」の世界だからだ。男性と女性では色彩感覚が少し違うらしい。訓練を積んでいない男性は、色彩感覚が女性より少し雑だと言う。  浮世絵なども、一部の絵師を除いて色は女性の仕事であった。版画なので「色指定」である。そして女性が指定することが多かった。  この小説は……[続きを読む]

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