『書方箋 この本、効キマス』の労働関連コラム

2025.02.20 【書評】
【書方箋 この本、効キマス】第100回 『蔦屋』 谷津 矢車 著/大矢 博子 NEW

文化衰退にどう抗ったか  出版界の片隅に身を置くものとして、大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』を毎週興味深く観ている。江戸中期から後期にかけて活躍した版元で、本の企画・出版から販売まで取り仕切った蔦屋重三郎の物語だ。  ここまでの放送でも、「吉原細見」(吉原遊郭の案内)を売るために有名人の平賀源内に序文を貰ったり、遊女からの入銀(ク……[続きを読む]

2025.02.13 【書評】
【書方箋 この本、効キマス】第99回 『王将の前で待つてて』 川上 弘美 著/荻原 裕幸

求人欄風の一句も  川上弘美さんの2冊目となる句集『王将の前で待つてて』が集英社から刊行された。川上さんは作家だけれど、小説とほぼ同じ長さの句歴をもつ俳人でもある。2010年に刊行された第1句集『機嫌のいい犬』も昨秋に文庫化された。このたびは、第1句集以後の活動から200句を超える作品を選んで構成している。加えて、30年間の自作30句にエ……[続きを読む]

2025.02.06 【書評】
【書方箋 この本、効キマス】第98回 『愛するということ』 エーリッヒ・フロム 著、鈴木 晶 訳/森岡 正博

現代の病理を映す名著  人を愛するとはどういうことだろう。紀元前の昔から、人々はこの問いを考え続けてきた。愛についての古典的名著はたくさんあるが、その中でも、社会心理学者のエーリッヒ・フロムが20世紀半ばに刊行したこの本は、現在も世界中で広く読まれ続けている。なぜならば、人生でいろんな体験をした大人の読者たちの知性に深く訴えかける内容とな……[続きを読む]

2025.01.30 【書評】
【書方箋 この本、効キマス】第97回 『墓標なき草原(上・下)』 楊 海英 著/濱口 桂一郎

大虐殺当事者の声を拾う  日本の相撲界にはモンゴル人がたくさんいるが、そのなかには中国国籍の内モンゴル人もいる。蒼国来(現・荒汐親方)や大青山がそうだ。彼ら内モンゴル人が、中国の文化大革命時に死者5万とも10万とも言われる大虐殺(ジェノサイド)を被ったことをご存じだろうか。口を開けば人権を叫ぶ戦後進歩主義者たちがだんまりを決め込んできた、……[続きを読む]

2025.01.23 【書評】
【書方箋 この本、効キマス】第96回 『藍を継ぐ海』 伊与原 新 著/大矢 博子

壮大な営み伝える短編集  今月15日に発表された第172回直木賞。受賞した伊与原新『藍を継ぐ海』は候補作のなかでも私のイチオシだったので実に嬉しい。  著者の伊与原新は1972年生まれ。東京大学大学院で地球惑星科学を専攻し博士課程を修了。富山大学理学部で助教として勤務する傍ら小説の執筆を始め、2010年に横溝正史ミステリ大賞を受賞した『お……[続きを読む]

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