週平均40時間なら割増なし? 特定の1カ月に出勤集中 1年変形制で日程を調整
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節電のため、1年単位変形制のスケジュールを調整しました。結果として、3月の稼働時間が増えましたが、従業員から「これで、1円も割増賃金が出ないのはおかしい」と疑問の声が寄せられました。「1年平均で週40時間」の条件を満たせば、月の労働時間に上限はないのでしょうか。【大阪・D社】
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振替休日あれば賃金増減
1カ月単位変形労働時間制では、変形期間を平均して週40時間以内の条件を満たすため、1カ月の法定労働時間の上限が自ずと決まります。31日の月の場合、40時間×31日÷7日=177.14…時間です。
しかし、1年単位変形労働時間制では、月をまたいで労働時間の貸借ができます。ただし、労基則第12条の4(1年単位の変形労働時間制における労働時間の限度等)の制約を受けます。
同条では、日・週に関しては1日10時間、1週52時間を上限としています。さらに、週の労働時間48時間を超える週については、「3カ月に3週以下」等の制限を課しています。1週1日の休日確保も必要です。
しかし、1カ月の上限は明記されていないので、労基則第12条の4の範囲内で、前記の177.14…時間を超える勤務スケジュールを組むことも可能です。
1年単位変形労働時間制に限らず、月給制を採る会社では、1カ月の所定労働日数が異なるにもかかわらず、毎月の賃金額が固定されています。
民法第624条第2項は「期間によって定めた報酬」について規定しています。労基法には「賃金は所定労働時間に応じて決めなければならない」等の規定は存在しないので、労使合意のうえで月を単位として賃金額を決めればそれも有効で、実務上はそれが当たり前となっています。
お尋ねのケースでも、法で定める範囲内で1カ月の所定労働時間を設定すれば、追加で賃金を支払う義務は生じません。3月の所定労働時間が増えても、他の月の減少でバランスが取れているはずです。
これに対し、月をまたいで振替休日を実施した場合、月の所定(契約)労働日数そのものは変えず、月当たりの労働日数を増減させます。ですから、日数が増えた月の賃金は追加で支払い、減った月の賃金をカットする必要が生じます。
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