今さら雇止め証明書交付? 期間満了で契約終了 退職から相当期間が経過
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契約期間満了で雇用関係を終了したパート労働者から、「雇止めの理由の証明書」の請求を受けました。当社としては、円満に処理を済ませた事案と考えていたので、今さら話を蒸し返したくないのが本音です。雇止めから「相当期日が経過」した後でも、証明書の交付義務があるのでしょうか。【愛知・U社】
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紛争防止のため応諾を
はじめに、パート労働者が希望しているのがどの請求書なのか、確認が必要です。労働者が退職した場合、退職時の証明書(労基法第22条第1項)を請求できます。退職時の証明書は、退職事由のいかんにかかわらず、請求があれば交付義務が生じます。厚生労働省の証明書モデルをみると、「契約期間の満了による退職」も例示されています(平11・2・19基発第81号)。
一方、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平15・厚生労働省告示第357号)の中にも、「雇止めの理由の明示」の規定が存在します。こちらは、「契約を3回以上更新し、または1年を超えて継続勤務している有期労働契約を更新しない」場合に請求可能です。ただし、「あらかじめ更新しない旨明示されているもの」は除かれます。
貴社では退職事由を「契約期間の満了」と認識していても、本人に不満があるため「雇止めの理由を明らかにしたい」というのであれば、後者の請求と考えられます。
通常は、「30日前の雇止めの予告(前記告示第2条)」がなされた時点で、証明書の請求がなされます(同第3条第1項)。しかし、「更新されなかった場合」も同様の義務を課している(同条第2項)ので、雇止めがなされた後の請求にも応じる必要があります。
いつまで交付義務があるかに関しては、労基法第22条に基づく「退職時の証明書」の場合、時効の対象となる「賃金その他の請求権」に含まれ、請求権の時効は2年と解されます(平11・3・31基発第169号)。
一方、「雇止めの理由書」等の根拠となる告示については、「労使間の紛争を未然に防止するための民事上のガイドライン」(安西愈「採用から退職までの法律実務」)であり、請求期限には触れていません。しかし、「相当期間」経過した後でも、請求に応じるのがベターです。
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