年休日は平均賃金が得か コスト抑えられる気も 今は「通常の賃金」で処理
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年休の取得日に支払う賃金ですが、当社では「その日出勤したものとみなして」処理しています。一部の会社では、平均賃金で支払っているという話を聞きましたが、平均賃金方式を採用した場合にはどのような利点があるのでしょうか。計算式をよくみると、確かに平均賃金方式で支払う方が人件費コストを低減できるようにも思いますが、いかがでしょうか。【広島・D社】
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時間外労働多ければ損
年休取得の際に支払うべき賃金として、労基法では次の3種類を定めています(第39条第7項)。
① 平均賃金
② 所定労働時間労働した場合の通常の賃金
③ 健保法の標準報酬日額(労使協定が必要)
年休賃金の選択は手続簡素化の見地より認められたもので、現実には、②「通常の賃金」を採用する会社が多数派です。「通常の賃金」の計算方法は労基則第25条で定められていますが、「通常の出勤をしたものとして取扱えば足り、都度、法定の計算を行う必要はない」とされています(昭27・9・20基発第675号)。
①(もしくは③)を選択するのは、一般には、賃金体系中に「出来高払い制その他請負制による賃金」が含まれるケースです。この場合、出来高給分の年休賃金は、月決め定額の賃金とは別の算式による必要があり、計算が煩雑となります。
出来高給がないシンプルな賃金体系を例にとって、①と②の金額を比較してみましょう。所定労働時間働いた場合の通常の賃金(月給額)を21万円、所定労働日数を21日とします。その月の時間外等割増賃金がゼロのケースでは、①による平均賃金(3カ月の総暦日数を91日とします)は、21万円×3カ月÷91日=6923円7銭です。一方、②による場合は、21万円÷21日=1万円となります。
これに対し、月当たりの時間外労働が60時間(ちょっと多いですが)あったとします。時間外割増賃金は、21万円÷168時間(8時間×21日)×60時間×1.25=9万3750円。平均賃金は、30万3750円×3カ月÷91日=1万13円73銭です。
時間外等の多寡により、①と②のいずれが有利か決まります。ただし、事業者は「都度、①~③の選択はできず、予め就業規則等で定めた計算方法による賃金を支払う」必要があります(平11・3・31基発第168号)。
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