傷病年金より休業給付が得か 「8割補償」選びたい 低い等級だと下回ることも
- Q
傷病が長期間治ゆせず、傷病等級に該当するときは、傷病補償年金が支払われます。障害の程度がかなり重いケースが想定されますが、仮に3級に認定されたとすれば、給付基礎日額の245日分の年金となります。そのまま休業補償給付をもらっていれば賃金の8割が補償されるので、不利なようにも思います。どちらか選択できるのでしょうか。【東京・F社】
- A
-
選択はムリだが差額支給
傷病補償年金は、療養の開始後1年6カ月を経過した日(またはその日以降)に、傷病が治ゆせず、1~3等級の傷病等級に該当する場合に支給されます(労災保険法第12条の8第3項)。給付の決定は政府の職権によって行われ、実務的には労基署長が支給の可否を認定します。ですから、労働者側が「どちらか選択」するものではありません。
傷病補償給付の認定前と後の給付水準を比較する際には、法に基づく給付のほか、社会復帰促進等事業として支給される特別支給金も考慮に入れる必要があります。
認定前は休業補償給付と休業特別支給金を併給します。休業補償給付が給付基礎日額の60%、特別支給金が同20%なので、おおむね休業前の賃金水準の8割相当が補償されます。
認定後は、傷病補償給付と傷病特別支給金・特別年金を併給します。特別支給金は一時金なので除き、他の2給付について検討します。
傷病補償給付は、傷病等級に基づく年金です。
1級…給付基礎日額313日分
2級…同277日分
3級…同245日分傷病特別年金は「ボーナス特別支給金」の一種で、障害等級1~3級に応じて、ボーナスを基準とする「算定基礎日額」の313日~245日分が支給されます。
しかし、ボーナスの少ない(支給されない)労働者もいるので、傷病補償給付と傷病特別年金の合計が必ず認定前の給付水準(休業補償給付+休業特別支給金)を上回るとは限りません。
このため、傷病補償給付と傷病特別年金の合計が年金給付基礎日額の292日分(365日の80%相当)に満たないときは、その差額を特別支給金として支給する仕組みが設けられています(特別支給金規則昭52附則第6条)。
※内容は掲載当時のものです。法改正等により内容に変更が生じている場合がございます。