派遣期間途中に雇用申込み!? 受入れから1年経過後 同時に契約解除も要請
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派遣先から、相当の猶予期間(2カ月前)を経たのち、労働者派遣契約を解除したい旨、申入れがありました。派遣労働者自身も退職に同意したので解除に応じたところ、後から派遣先が派遣労働者を直接雇用する約束をしていたことが判明しました。派遣先は、「1年経過後に雇用の努力義務を果たしただけ」といいますが、こんなやり方が認められるのでしょうか。【福島・S社】
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契約終了前で権利の侵害
派遣法では、派遣先に対し、雇用の努力義務・申込み義務を課しています。現在は、次の3種類の仕組みが設けられています。
① 雇用の努力義務(派遣法第40条の3)
② 自由化業務の雇用申込み義務(同第40条の4)
③ 派遣受入期間制限のない業務の雇用申込み義務(同第40条の5)先ごろ公布された改正派遣法では、このほか「違法派遣先の雇用申込みみなし制(同第40条の6~第40条の8)」を新設しましたが、施行は3年後を予定しています。
①の雇用の努力義務は、派遣先が「継続して1年以上派遣受入期間以内の期間、同一の派遣労働者を受け入れる」ことが前提条件となっています。しかし、1年を経過すれば自動的に雇用の努力義務の対象となるわけではなく「同一の業務に従事させるため、派遣実施期間が経過した日以後」、労働者を雇入れようとすることが要件となります。派遣労働者側については、次の2つの条件を満たす必要があります。
①派遣実施期間が経過した日までに、直接雇用を希望する旨を派遣先に申し出たこと
②派遣実施期間が経過した日から起算して7日以内に派遣元との雇用関係が終了したこと派遣元は、正当な理由がなければ、「雇用関係終了後、派遣労働者が派遣先に雇用されることを禁じる」旨の契約を締結できません(派遣法第33条)。しかし、「雇用契約の終了以前について、派遣先が派遣労働者を雇用することを禁ずる契約を締結すること自体は許容できる」と解されています(派遣事業取扱要領)。
お尋ねのケースでは、派遣元との雇用契約が終了する以前なので、雇用の努力義務は発生していません。それにもかかわらず、派遣先が契約期間の途中で派遣労働者に対して直接雇用の契約締結を働きかけるのは、派遣元の権利侵害になります。
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