半日の振替で割増不要? 残業分は翌日休ませる 週40時間に収める目的
- Q
顧問先の社長さんですが、時間外割増の計算で、なかなか修正に同意してくれません。4時間の残業があった翌日、午前中の労働を免除すれば、「半日の休日振替だから、時間外割増は不要のはずだ」と持論を開陳します。どのように説得すれば、よいのでしょうか。【大阪・Y社労士】
- A
-
恣意的法解釈認められず
休日の振替とは、あらかじめ振り替えるべき日を特定して、休日と労働日を入れ替えることをいいます。振替の効果は、法定休日と法定外休日で異なります。
法定休日については、休日を振り替れば「元々の休日が労働日となる」(昭23・4・19基収第1397号)ので、3割5分増しの割増賃金の支払い義務を免れる効果が生じます。
一方、法定外休日の場合、その日に出勤させても直ちに割増賃金の対象になるものではありません(就業規則等で、法定外休日の割増賃金支払いを規定している場合は別です)。振替は、同一週内に休日を与えることにより週の労働時間を40時間以内に収め、割増賃金を支払う必要をなくすのが目的となります。
お尋ねのケースで、社長さんがイメージしているのは後のパターンです。「半日の休日振替(仮にそれが可能として)」は、休日割増賃金ではなく、時間外割増賃金の支払いを免れるのが目的です。
しかし、「半日の振替」というには、第1日目の午後と第2日目の午前を振り替えるなど、半日単位の処理が必要となります。終業時刻(たとえば、午後5時)から当日の午後12時まで7時間しかないので、半日(12時間)を振り替える余地がありません。社長さんがいうのは「時間単位の振替」に当たり、非現実的というほかありません。
「百歩譲って」、時間単位の振替を認めたとしても、「継続勤務が2暦日にわたる場合、暦日を異にするときも1勤務として取り扱う」のが原則です(昭63・1・1基発第1号)。また、「振替により法定労働時間を超えたときは、その超えた労働時間が時間外労働となり」ます(昭22・11・27基発第401号)。
仮に振替により第1日目の終業時刻以降が第2日目の労働とみなされたとしても「1勤務として」取り扱い、通算労働時間が1日8時間を超えれば、その分について時間外割増の支払義務を免れることはできません。
※内容は掲載当時のものです。法改正等により内容に変更が生じている場合がございます。