賃金支払日の繰下げできるか 締切日も同時に変更 従業員は法違反として反発
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当社は複数の子会社を抱えますが、賃金締切・支払日の異なる会社が存在します。このたび、10日締め・20日支払いの会社を、20日締め・月末支払いに統一することに決まりました。しかし、子会社の社員が「支払日の繰上げは可能だが、繰下げは違法のはず」と主張します。そのような法規制が存在するのでしょうか。【大分・G社】
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合理性欠くとはいえない
賃金は、毎月1回以上、一定期日を定めて支払う必要があります(労基法第24条)。「賃金の締切および支払いの時期」は、就業規則の絶対的必要記載事項です(同第89条)。
いったん、賃金の締切・支払日を定めれば、任意にその期日を変動させることはできません。しかし、事務処理上の理由等で、ルールの変更が必要な場合も生じます。
労基法の範囲内でいえば、労基法第24条(毎月払の原則)に反せず、また労働協約で特段の合意がない限り、「使用者が事前に法所定の手続き(労基法第90条)に従って就業規則を変更しても問題ない」と解されています(労基法コンメンタール)。
「繰上げは可能だが、繰下げは不可」という主張は、労働条件の不利益変更を念頭に置いているのでしょう。
締切日を変えず、単に支払日のみを繰下げるのは、確かに「不利益な変更」と評価されるでしょう。しかし、労働契約法第10条では、労働者の不利益の程度・変更の必要性等を考慮し合理性があれば、変更後の規則の周知を前提に、不利益変更も可能としています。
支払日のみの繰下げも、締切日と支払日のタイムラグ、変更を必要とする理由等を考慮し、可能と判断されるケースもあり得るでしょう。
お尋ねの子会社では、締切・支払日を同時に繰下げ、締切・支払日の間隔は変わりません。旧支払日に着目すれば、「受け取れたはずの賃金が支給されない」形になりますが、新支払日をみれば、「従来より早めに賃金が清算・支払われる」メリットがあります。
解釈例規では、「労働者の不利益とは、個々の労働者の不利益をいう」(平20・1・23基発第0123004号)としています。支払日の変更はローン返済日等の関連で一部従業員の「不便」を来しますが、合理性の判断を覆す程度に至るとはみなされないでしょう。
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