在宅勤務で深夜割増は? 労働時間の把握困難 事業場外みなし制を採用
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当社では、在宅勤務制度に適合する業務を洗い出し、今夏より対象者を大幅に拡大しました。時間把握が困難なため、「事業場外労働のみなし時間制」を採用しています。しかし、「在宅勤務者の中には、だんだんと仕事の時間帯が深夜にシフトしている者もいる」と聞きます。この場合、深夜労働の割増賃金の扱いはどうなるのでしょうか。【東京・A社】
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事前に許可採るよう徹底
震災被害とそれに伴う電力不足を契機として、在宅勤務が再び世間の耳目を集めています。厚生労働省では、平成24年3月に「在宅勤務での適正な労働時間管理の手引き」を作成しましたが、その中では「災害時の事業継続性(本社機能がストップしても自宅で就労可能)」「節電対策」をメリットとして挙げています。
在宅勤務には「雇用型」と「非雇用型」がありますが、雇用型(労基法上の労働者)であれば労基法上の労働時間に関する規定が適用されます。一定条件を満たす場合、みなし労働時間制を採ることもできます(平20・7・28基発第0728002号)。
要件は次のとおりです。
① 起居寝食する自宅で勤務する
② 常時通信可能な状態を維持する義務がない
③ 随時、業務の具体的指示が出される状態でないしかし、みなし労働時間制を採っていても、「現実に深夜に労働した場合は深夜労働に係る割増賃金の支払いが必要」です。
起居寝食する生活時間が深夜に移動し、昼夜逆転生活を送っている場合でも、深夜割増賃金を支払うべき時間帯(午後10時から翌日午前5時まで)に変更はありません。
このため、「手引き」では、「休日・深夜労働は使用者の具体的指揮命令下で行わせる(事前許可制を採る等)」ことを推奨しています。事前許可のルールを徹底している場合、それに違反する深夜労働等は「使用者のいかなる関与もなしに行われたもので、労基法上の労働時間に該当しない」という取扱いも可能です(前掲解釈例規)。具体的には、次の条件に当てはまるケースが考えられます。
① 深夜労働等の強制の事実がない
② 業務量が過大であるなど黙示の指揮命令があったと解する事情がない
③ 深夜にメールが発送されるなど「使用者が深夜労働を知り得る状態」にない※内容は掲載当時のものです。法改正等により内容に変更が生じている場合がございます。