【特集1】VR×安全教育 災害防止のノウハウを学習 体験で終わらせず“実質化”へ/<事例>竹中工務店東京本店・きんでん・商船三井・厚労省
VR(バーチャル・リアリティ)を使った安全教育が建設、製造業を中心に拡がりつつある。実際には体験できない事故や災害を再現し、未然防止につなげるのが狙いだ。今号特集Ⅰでは、竹中工務店東京本店の開発した「V‐SAT」、きんでん、商船三井のVR教育、厚労省の作成した教材を紹介。蓄積されたノウハウや災害事例を活用し、体験で終わらせず学習へつなげるプログラムを作成し、社員や協力会社作業員の教育を始めている。
新規入場者への教育に活用
バーチャル・リアリティ元年といわれる2016年以降、VRは産業現場や教育、医療、エンターテインメントなどさまざまな場で普及が進んでいる。安全衛生教育の分野でも、現実では再現が難しい状況を体験することで災害の未然防止につなげている企業が増えてきた。特にコロナ禍の影響で現場への不要不急の立ち入りや作業員を集めた集合教育が制限されるなか、場所を選ばずに臨場感を得られる教育ツールとして、より関心が高まっている。
2020年に建設業労働災害防止協会が実施した調査では、建設会社29社中15社がVRを使った教育を実施していると回答した。墜落・転落や飛来・落下、崩壊といった災害を疑似体験するプログラムが多く、危険感受性や安全意識向上を目的に、自社社員や協力会社社員の安全教育などに活用していた。調査報告では、状況認識や意思決定、コミュニケーションなど危険を回避するための基礎的能力といわれるノンテクニカルスキルの向上に期待されるとし、安全な環境下で危険事象を繰り返し体験できることを利点に挙げている。
待ち時間の長さが課題
一方で、調査からはバリエーションの少なさやコスト負担、待ち時間などが導入を阻害する要因になっているなど、今後克服すべき課題も明らかになった。目新しさや面白さが先行しがちな面もあるとして、「安全衛生教育の“実質化”が必要」とまとめている。より多くかつ多様な場面を提供し、一度きりの体験で終わらせず、さまざまな危険を体験することで、自らの行為を顧みる機会を設ける、行動を改善するサイクルが必要とした。
行政・業界団体でも普及の動き
厚労省では、外国人や働いてまだ間もない人、安全活動の低調な第三次産業の労働者への安全教育の入り口としてVRを活用しようとする動きがある。業界団体では、日本造船協力事業者団体連合会が今年、造船業界に特化したVR教材の製作に着手した。昨年から体感教育での導入を始めていたが、より効果を高めるため、造船現場を題材にしたVR教育の検討を開始している。
次ページからはVRを活用した安全教育事例を紹介。竹中工務店東京本店の開発した「V‐SAT」は、稼働中の現場の実写映像を使っている点が特徴だ。きんでん、商船三井の作成した教育ツールは、自社の作業内容や頻度の高い事故災害事例を再現し、災害防止対策をしっかりと理解できるよう教育内容を考えている。…
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