【年始小論】名実に隔たりない管理と人的対策を/安全スタッフ編集部
2011年のことし、産業安全に求められるものは何か――。労働安全衛生マネジメントシステムの導入が図られてから10年が経過し、その中核活動としてリスクアセスメントが努力義務化されたことによって事故災害防止に向けた組織的展開のありようは整備された観がある。しかし、普及状況と実践内容には未だに企業によって格差があり、業種・業態に適合したかたちへの改善意見も出始めている。一方、景気低迷を背景要因とした労働態様の変化が労働者に及ぼしている影響、とりわけメンタルヘルス不調の問題は深刻度を増し、減退することがない。そうした諸状況に注目しながら、職場安全衛生は管理システムと働く人たちの現況を見直し、施策の名実に隔たりがあるのであれば、それを埋めて足元のしっかりしたものへと手直しを図る必要があるのではないか。
災害発生に“後戻り”の兆しが
労働災害による死亡者数が、再び増加現象を見せている。厚生労働省の災害統計(平成22年11月7日現在・速報値)によると、昨年1月~10月の全産業での死亡者数は前年同期を100人強上回る876人。しかも、数値の増加は鉱業、港湾荷役業を除くすべての業種にわたっている。
同じ統計にある休業4日以上の死傷災害の発生(1月~9月)においても全産業の被災者総数は1000人超の増加で、年間の最終的な数値が前年を下回るとは思えない状況にある(本号「統計資料」参照)。
こうした“後戻り”傾向の広まりに警戒感を強めた厚労省は、すでに昨年9月の時点で関係業界団体に対し、経営トップ自らが先頭に立っての安全衛生管理体制・活動に関する点検実施などを要請。また、都道府県労働局には墜落・転落、交通事故等の特定災害の防止に重点をおいた指導を徹底するよう通達している。
行政サイドからの緊急要請と指導強化の指示はおよそ4年ぶりとのことだったが、これはとりもなおさず、右肩下がりで推移し過去最少を更新し続けてきた災害発生の減少にストップのかかる懸念が強いことを示している。また、件数そのものが急激な悪化と捉えるほどの数字ではないにしても、増加に転じている現実には、職場・現場での管理活動の動きに停滞もしくは鈍化の兆候があるかと推測せざるをえないところがある。
本誌ではそのへんについて、災害削減に有効に機能すると評されている労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS、COHSMS)と、それに続くリスクアセスメントに視点を置き、さらなる普及・実践について再考してみたい。
OSHMSのエッセンスを生かしたい
ここ10年余、職場の安全衛生はOSHMSの導入・実践を時代のすう勢、あるいはめざすべき方向として推し進められてきた。背景には、…
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