適用要件の引下げを検討 60~70万円で対象は3倍に 厚労省
メリット制拡大へ中間報告
厚生労働省の労災保険財政検討会は、事業場の労災発生率に応じて保険料を割引きする「メリット制」の見直し(1月1日号ニュース欄既報)について中間報告を取りまとめた。メリット制適用事業場の割合が減少していることなどから、適用要件である確定保険料額などを再設定する必要があるとしている。
適用要件が「確定保険料額が100万円以上の事業場」である建設業の一括有期事業では、現在メリット制の適用割合が労災保険適用事業場全体の2.2%(1.3万事業場)。
直近に適用要件の見直しが行われた昭和63年の6.6%(3.4万事業場)から比べて著しく低下しているため、要件の確定保険料額を引き下げることで、対象となる事業場の割合を増やす考えだ。
厚労省の試算によると、確定保険料額を「60万円以上」に引き下げた場合の適用割合は7.1%になるため、60~70万円の範囲に設定することで昭和63年の水準に近づくとみられる。仮に60万円とすると、メリット制の割引効果による減収を補填するため、0.5/1000程度の労災保険料率引き上げが必要となる見込みだ。40%の割引率を30%などへ縮小することで減収を小さくする案も挙がっている。
一方、単独有期事業の場合、メリット制の適用要件は「①請負金額が1億2000万円以上」または「②確定保険料100万円以上」となっている。現在では設定当時より労災保険料率が下がっているため、請負金額1億2000万円の有期事業場の確定保険料を計算すると、100万円ではなく38.8万円になるという。
①②の要件に大幅な不均衡が生じているとして、両要件を同時に引き下げ、影響ができるだけ小さくなる組み合わせを工夫するとした。
厚労省は今回の報告を踏まえ、メリット制見直しについて労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会でさらに検討を行う予定。平成24年の保険料率改定の際にメリット制の適用要件を改定するとしている。