【特集】「作業基準書」をイラストで表現 安全衛生の意識改革進む/ビル代行
安全に作業を行ってもらうため、いろいろな社内的ルールや決めごとがある。作業ごとの安全作業基準書があれば、初めての仕事でもそれをみてどこに気をつければいいのか分かるが、文章が難解であったり、活字でぎっしり埋まった書類は、とくに現場で働く作業者には敬遠される。㈱ビル代行では、「清掃業務」「設備管理業務」「警備・保安業務」の安全作業基準書にイラストをふんだんに盛り込み、作業者の安全衛生意識を格段に向上させた。作業者が行動に移してこそ、生きた作業基準書といえる。
従業員の7割超がパート
ビルメンテナンス業の安全衛生事情を知るには、まずこの業界を取り巻く環境を把握しておく必要がある。そこで、同社本社営業管理部で安全衛生担当の加藤裕二さんに話を聞いた。
加藤さんによれば、ビルメン業は中小零細企業が多く、それぞれの会社が単独で安全衛生体制を維持整備していくには人材面からも規模的な側面からも極めて困難な経営環境にあるという。そこで、業界団体のビルメンテナンス協会やグループの中核会社が各種の基準書などを整備しつつ、協力会社と一体となって管理・運営していくのが現実的な方法とされている。
現場の特異性、顧客意向の課題もある。ビルメン業は直接顧客の現場でサービスを提供する業務となっており、勤務場所が分散し顧客の意向に大きく左右される。加えて現場ごとにビルのレイアウトや設備機器が異なるため、製造業の工場のように事業場としての各種取組みの一体運用が困難といえ、現場ビルごとに業務資料を準備し、個別運用している状況だ。
同じ現場でありながら、フロア別に複数会社が業務を請け負っているという特殊事情もあり、管理権が及びにくいためビル全体に自社の安全衛生基準を適用することは難しいといえる。ビル管理会社を通じて実施するという手段しかない。
さらに、どの業界にも少なからず当てはまるのが、安全衛生やリスクアセスメントの実施が直接的には収益を生まない付随的業務との潜在意識がある。中小企業になればなるほどこの傾向は強く、安全衛生組織の権限と責任があいまいで人材育成が後回しにされるケースもあるようだ。
人材面でもビルメン業は特徴がある。同社を例にとると、現場で清掃業務、設備管理業務、警備保安業務に従事する作業者は50歳以上の中高年齢者が多く、安全衛生への関心や意識は必ずしも高いとはいえず、とくにパート採用者は定着率が低いということもあり、継続した適切な安全衛生教育や安全管理を徹底させにくい状況にあった。同社従業員約3400人(平成23年6月末現在)のうち、東京本社管轄従業員が約2700人いるが、パート労働者が約2000人と約74%を占める状況にある。
見てもらわなければ意味がない
こうした状況を踏まえ、…
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