【特集2】メンタルヘルス不全の予防へ 求められるキャリアカウンセリング(下)
働き方に関する「キャリア」の支援を積極的に行うことで、メンタルヘルス不全の予防に効果があるとする法政大学の宮城まり子教授。今号では、キャリアカウンセリングを受けた人の事例をとおして、いかにキャリア形成を行い、メンタルヘルスを回復していったか、そのプロセスを紹介する。また、「メンタルヘルス相談室」より敷居が低く、マイナスイメージのない「キャリア相談室」の設置を求めている。
キャリア支援の事例検討
具体的な事例を2つ取り上げてみよう。この事例はメンタルヘルス不全の陰にキャリアに関する問題を抱えている事例である。ここで取り上げる2事例は、社内の「キャリア相談室」の事例である。
事例A 上司から叱責
①Aさんのプロフィールと問題:男性26歳、有名私立大学卒、大手メーカー勤務。2カ月ほど不眠、体調不良(風邪をひく、頭痛、腹痛)、仕事に対する意欲・やる気の低下。会社を休むことが続き、上司の勧めで産業医やカウンセラーと面談する。
②カウンセリングへの経過:Aさんは大学卒業後、現在の会社に入社。若手の優秀な人材として、社内の新たな商品企画のプロジェクトメンバーに特別に選抜され、約半年が経過。若手ながら選抜されエリート意識を強くもっていた。プロジェクトのなかでは上司から業務を次から次へと与えられ、結果を出すことを早急に求められる日々に追われていた。思わぬミスも起き、仕事が予想外に処理できず悩みボンヤリしていたため、上司から注意・叱責された。上司から呼ばれ「君の選抜は期待はずれだったな。もし希望するなら降りることも可能だぞ」と言われた。Aさんはプライドが傷つき、ショックを受け、体調不良、不眠となり、次第にやる気を失い、会社を休んだり、仕事中もぼんやりする状態に至り上司から産業医を紹介された。
③Aさんの心理:もし選抜メンバーから外されたら、次に自分はどこへ行ったらいいのか、今後のキャリアに汚点がつくのではないか、選抜されたことを同期に羨ましがられていた面目が丸つぶれになるのではないかと恐れていた。プロジェクトに残ることへの自信も喪失し、一人で極端に考え、会社を辞めるところまで視野に入れるようになった。…
執筆:法政大学キャリアデザイン学部教授 臨床心理士 宮城 まり子
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