【特集】問診表提出は月1回も 私病から作業者を守る 見習いたい協力会社への衛生管理/伊藤組
建設業の安全衛生活動といえば、一般的に墜落・転落災害防止を中心とした安全面にウエートが置かれるが、労働衛生管理にも力を入れている会社がある。㈱伊藤組は協力会社の作業者に毎月必ず健康問診表を提出してもらい、日常的な健康管理の徹底を図り私病を発症させないための取組みを行っている。協力会社の作業者の健康管理にあえて足を踏み入れている理由は何か。話を聞いてみた。
死亡の場面に立ち会う
とび・土工工事専門業を営む同社は、愛知県あま市に位置し、愛知を拠点に岐阜・三重・静岡をエリアとしている。同社に関する情報でとくに注目されるのが、明治7年創業というその歴史の古さにある。137年にも及ぶ年月は、協力会社との良好な関係を維持してこなければ、刻めない数字ともいえる。
安全に対する考え方としては2011年度の安全衛生管理方針をみると、「妥協のない強い意志のもと決められた事、やらなくてはならない事を確実に行い休業災害ゼロ重大災害ゼロを達成する」との理念を掲げ、労働災害防止活動を行っている。
長い歴史とともに安全活動も順調に推移してきたが、平成19年に作業の休憩中に私病を発症し2人が死亡する特殊災害が発生した。1人は胃の中で突発的に出血したことが原因で、もう1人が狭心症によるものだった。
2人の死亡を契機に、「いかに衛生管理活動が重要で、私病が身近で危険な存在であるかを思い知らされた」と語るのは、同社の平野明則労務安全部長だ。平野部長は、作業者が亡くなった時に立ち会っており私病発症防止への強い決意を固めたという。
そこで、同社が二度と類似災害を発生させないよう①作業者に自分自身の健康管理および体調管理を見直す手掛りを与える、②事業主が作業者の健康・体調を把握し、きめ細やかなフォローを行う――の2つを重点として私病災害防止対策に取り組むこととなった。
医療機関が就業可否を判定
私病災害防止対策を進めるうえで分かったことは、平成19年度まで定期健康診断で「異常なし」と診断された作業者が毎年3~4人作業現場で私病を発症させていた点だ。発症場所が高所や開口部だった場合、墜落・転落の可能性の高い危険な場所となる。
そうしたケースも考え、私病災害防止対策の具体的な取組みが急務となり、同社と協力会社事業主で意見交換を行った結果、定期健診実施医療機関の間で精度にギャップがある、診断結果の細部へのフォローが不十分、作業者一人ひとりの健康状態の把握ができていない、「何のために健康・体調管理をやるのか」に対する啓発が不十分などの問題点が続出した。
そこで、同社と協力会社が連帯して協力し私病発生ゼロへ向けた次の7項目の取り組んでいる。…
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