経営判断も義務的団交事項 専権事項と主張し誠実義務違反 長崎県労委

2017.12.18 【Web限定ニュース】
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 長崎県労働委員会(國弘達夫会長)は、全日本海員組合の組合員がこれまで従事してきた、高速船(ジェットフォイル)の整備員職種について、九州商船㈱が新たに陸上で雇用(以下「陸上化」とする)した事案で、同社を誠実交渉義務違反と認定した。陸上化は経営判断事項に該当するが、経営判断事項であるからといって、義務的団交事項に当たらないとはいえない判断。陸上化を経営の専権事項と主張し、組合の求める資料を提示しなかったことは不当労働行為にあたるとした。

 同社には陸上業務に従事する社員が加入する企業内組合と、船員が加入する海員組合がある。どちらの組合ともユニオンショップ協定を締結しており、海員組合とのユシ協定には「会社の所属船員は、すべて組合員でなければならない」と規定。ジェットフォイルの整備員は、船員がローテーションで務めていた。

 同社は2015年12月14日の労使交渉で、整備員を今後、陸上の社員として採用する「陸上化」を提案。陸上化の理由としてコスト削減などを挙げ、16年4月から実施するとした。これに対し海員組合は、整備員はユシ協定により組合の職域だと主張。陸上化に伴う要員計画などの資料を求めた。

 その後、陸上化を巡る労使交渉は複数回行われたが、経営の専権事項と主張する同社と白紙撤回を求める海員組合の議論は平行線を辿り、合意に至らなかった。同社は合意が得られないまま、4月1日に整備員として2人を採用。2人は企業内組合に加入した。

 同県労委では、陸上化が義務的団交事項に当たるか否かなどが争点となった。

 同県労委はまず、ユシ協定の「所属船員」に整備員が含まれるとはいえないとした。しかし、20年以上整備員の労働条件も労使協議で決定してきたことから、このような労使慣行を破棄するためには協議が必要とした。

 同社の「陸上化は会社の専権事項」との主張に対しては、「コスト削減などの理由から、陸上化は経営判断事項に該当するが、経営判断事項であることをもって、義務的団交事項でないとすることはできない」と判断。海員組合の求める資料を提示しなかったことは、誠実交渉義務違反に当たるとした。

 また、同県労委は同社が新規雇用した整備員に企業内組合の加入用紙を手渡したことは支配介入だとした。さらに、労使交渉で同社が「どちらの組合に入れるかも大きな問題」と発言したことから、陸上化は企業内組合に加入させることが目的だと推認できるとした。

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