認可保育園の解雇無効 園は「労働者が乗っ取り画策」と主張も 賃金遅配など常態化 さいたま地裁

2022.09.05 【Web限定ニュース】
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 埼玉県内の認可保育園で働いていた労働者2人が、解雇を不服として運営会社の㈱光彩(埼玉県熊谷市、瀧澤弘子代表取締役)を訴えた2つの事件で、さいたま地方裁判所は解雇を無効と判断した。同社は保育園の乗っ取りを画策したとして、2人の労働者を令和3年9月27日と11月12日にそれぞれ解雇していた。

 同地裁は労働者の行動について、「経営上の問題の改善のために働きかけをしていたに過ぎない」と指摘。賃金遅配の常態化や代表取締役が複数人の従業員から金銭を借り、返済が滞るトラブルがあったことを踏まえれば、「改善を望むのは至極当然」と同社の主張を退けた。解雇は一方的かつ極めてずさんなものであるとして、バックペイに加え、慰謝料各50万円、30万円の支払いも命じている。判決はどちらも令和4年7月26日。

 同社は保育園の経営を営む株式会社で、埼玉県熊谷市内に認可保育園であるりゅうさい保育園を開設している。裁判を起こしたのは同保育園で働いていた副施設長と保育士の2人。副施設長は令和2年4月1日、保育士は3年7月1日に入社したが、それぞれ同年9月27日、同年11月12日付けで解雇に遭った。

 副施設長は立場上、保育園の従業員から経営に関する相談を受ける機会が多数あり、そのなかで、自身を含めた複数人が代表取締役に金銭を貸しており、返済が滞っていることを知った。さらに賃金の遅配や未払いが常態化していることも明らかになった。副施設長は経営の状況や金銭トラブルについて繰り返し対応を求めたが、代表取締役は自らの問題を認めようとせず、逆に副施設長を責め立てた。同保育士も経営上の問題や金銭トラブルを見聞きし、改善のために市役所や他の従業員に働きかけていた。

 同社は裁判で、2人の労働者は同保育園を乗っ取ろうと画策していたと主張した。同地裁は「乗っ取りであるという証拠はない」と一蹴。自らの意に沿わず、経営上の問題改善のための働きかけをしていた労働者について、「乗っ取りを企図しているなどと邪推」していると指摘した。解雇は合理的理由も社会的相当性も欠く不当なものと言わざるを得ないとして、無効と判断している。

 解雇は不法行為にも当たると評価した。同社の理由付けは一方的で客観性を欠き、手続き面も弁明の機会すら与えない極めてずさんなものであり、その目的も意に沿わない労働者らを排除するという不当なものだったとして、副施設長には50万円、同保育士には30万円の慰謝料支払いを命じている。

【令和4年7月26日、さいたま地裁判決】

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