2022年の安全衛生ニュースを振り返る(1) 一人親方を安衛法の保護対象に 最高裁判決受け省令改正
2022年も残すところあとわずか。労働安全衛生法施行から50年の節目である今年、安全衛生分野では化学物質の自律的管理を推進する仕組みの導入、第三次産業を中心とした行動災害防止のための運動が始まるなど、新たな時代に向かった変化に富む年となった。今年話題となった安全衛生関連のニュースを振り返る。
個人事業主への配慮・周知義務を追加
厚生労働省は4月15日、労働安全衛生規則、有機溶剤中毒予防規則など11の省令を改正し、労働者と同じ場所で働く一人親方などを省令の保護対象に加えた。建設業の元労働者やその遺族が石綿疾患の国家賠償を求めていた訴訟の最高裁判決を踏まえたもので、一人親方などの個人事業主と契約している元請事業者に対して、局所排気装置などの設備設置について労働者と同様の配慮や、保護具の使用方法など安全衛生対策の周知を義務付けた。
有機溶剤中毒予防規則では、事業者が局所排気装置、プッシュプル型換気装置または全体換気装置を設けたときに、労働者が有機溶剤業務に従事する間、同装置を法令に定める条件で稼働させる義務がある。改正では、同業務の一部を請負人に請け負わせる場合も労働者と同様の配慮が必要になるとした。作業方法、保護具使用などの作業実施上の安全確保に関する規定では、安全確保のために省令で規定されている特定の作業方法の順守や保護具の使用などの必要性について、作業を請け負わせる請負人への周知義務を新たに設けている。場所の使用・管理権原などに基づく立入禁止、特定行為の禁止、退避、入退室管理などの措置についても、労働者以外の者(請負人や同場所で他の作業に従事する者)を対象に追加した。
改正の発端となった昨年5月の最高裁判決では、労働者などが石綿にばく露した当時、国が規制権限を適切に行使しなかったことが原因と認定。労働者だけでなく、一人親方を含めた屋内の建設作業者に対する国の責任も認めた。厚労省は「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会を設置し、今後も安衛法上の個人事業主の保護に関する措置の議論を続けるとしている。
改正する11省令は以下①〜⑪で、令和5年4月1日施行。
①労働安全衛生規則、②有機溶剤中毒予防規則、③鉛中毒予防規則、④四アルキル鉛中毒予防規則、⑤特定化学物質障害予防規則、⑥高気圧作業安全衛生規則、⑦電離放射線障害防止規則、⑧酸素欠乏症等防止規則、⑨粉じん障害防止規則、⑩石綿障害予防規則、⑪東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則
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