2023年の安全衛生ニュースを振り返る(4) カスハラによる精神障害も労災に 厚労省が認定の判断基準を改正
顧客・取引先の著しい迷惑行為を考慮
厚生労働省は9月1日、精神障害に関する労災認定の判断基準である心理的負荷による精神障害の認定基準を改正した。実際に発生した業務による出来事のストレスの強さを評価する心理的負荷評価表を見直し、顧客や取引先、施設利用者などから著しい迷惑行為を受けた、いわゆる「カスタマーハラスメント」を追加している。著しい迷惑行為とは、暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求などをいう。迷惑行為に至る経緯や内容、顧客など相手方との職務上の関係、反復・継続など執拗性の状況、会社の対応の有無および内容、改善の状況などから心理的負荷を総合評価するとした。
その他、心理的負荷評価表の見直しでは、心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体例を拡充。評価表の明確化などにより、より適切な認定を図っていく。精神障害が悪化したケースについては、悪化前おおむね6カ月以内に特別な出来事がなくても、業務による強い心理的負荷によって悪化したときには、悪化した部分について業務起因性を認めることとした。
精神障害の労災保険給付請求件数は年々増加しており、令和4年度には 2683件の請求があった。認定制度の認知が高まったのほか、働き方の多様化や職場環境などの変化が背景にあり、最新の医学、法学的知見などを踏まえた見直しを行っている。今回の見直しでは、迅速な認定へつなげるため、これまで専門医3人による合議だったものを、特に困難なものを除き1人の意見で決定できるよう変更した。厚労省では、一層迅速・適正な労災補償を行っていくとしている。
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