2023年の安全衛生ニュースを振り返る(5) 個人事業者の労災で報告制度 注文者責任を強化へ 厚労省検討会が提言
休業4日以上の業務災害を対象に
厚生労働省は10月、「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」の報告書を取りまとめた。一人親方などの個人事業者や中小企業事業主について、休業4日以上の業務上災害の報告を、個人事業者本人と直近上位の注文者に義務付けるべきと提言している。直近上位の注文者が災害発生場所に来ることが一切ない場合は、注文者に代わって、災害発生場所を管理するさらに上位の注文者が報告主体となる。雇用関係や請負関係にない者の災害を報告するという特殊性を考慮し、いずれも罰則はなしの義務規定とした。
労働災害の報告は、個人事業者などが災害発生の事実を伝達・報告することが可能な場合は、個人事業者本人が注文者・災害発生場所の管理事業者に対して行う。報告を受けた注文者・災害発生場所の管理事業者は、その内容を踏まえ、業務内容や災害発生場所の状況など必要事項を補足し、労働基準監督署に報告する流れを想定している。本人が死亡や入院などで災害発生の事実を伝達できない場合は、注文者が把握可能なものについて報告するとした。
注文者が、災害の発生を現認、または被災者の救助や救急搬送などの事実を把握した場合などに報告義務を生じさせる考え。個人事業者が業務上災害を報告したことを理由とする不利益取扱いを禁止するよう、法令で主な具体例を明示するほか、通達で全体像を示すとした。また、注文者が災害発生の事実を知り得なかった場合や、被災者が業務と関係のない行為で被災したことが明らかな事案は対象外とした。
健康管理のガイドラインも策定へ
一方、厚生労働省は、個人事業者の健康確保に向けて、個人事業者本人と注文者の実施・配慮事項について、「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」(仮称)を今年度中にまとめる方針。ガイドラインは、個人事業者自身が行う事項や、仕事の注文者または仕事を管理する者が配慮する事項を示し、自主的な取組みを促す。
個人事業者の健康管理については、個人事業者自ら行うことを基本としたうえで、注文条件が個人事業者の健康に及ぼす影響の程度に応じて、注文者や作業環境を管理する者が必要な措置を講じるものとする。本人が取り組む事項には、定期的な健康診断の受診や、危険有害業務に従事する労働者向けの特殊健康診断と同等の診断の受診などを盛り込む。
個人事業者が1社から受けた仕事のみを行っており、契約期間が1年を超える場合や、1年を超えない期間の契約を繰り返し締結しているような場合には、注文者が請負契約に一般健診費用を安全衛生経費として盛り込むのが望ましいとの考えを示した。
<関連記事>
一人親方も注文者が報告 業務上災害で義務化へ 休業4日以上を対象に 厚労省報告書(安全スタッフ2023年12月1日号)
ガイドライン作成へ 個人事業者の健康管理で 厚労省(労働新聞2023年12月25日号)