【特集1】ナッジ施策で安全行動を後押し 人間特性利用して事故防止へ “思わずしてしまう”好事例集まる/NTT東日本 埼玉事業部
NTT東日本 埼玉事業部では、人間の特性を利用して良い行動を後押しするナッジ理論の考え方を取り入れた新たな切り口の事故防止活動を推進している。アウトリガーの敷鉄板に的を描いて中心を狙わせる工夫や、飛び出す3Dイラストの注意表示、暑い日に被りたくなる扇風機付きヘルメットなど、“思わずしてしまう”安全対策のアイデアを社内・協力会社から募集。コンテスト形式で優良施策を決定し、社内で水平展開をした。同じくナッジ施策では生成AIを使ったインパクトのある安全啓発ポスターも作成。誰でも気軽に参加できる活動を通じて、安全意識向上につなげている。
良い行動を“後押し”する工夫
ナッジとは ナッジ(nudge):人間の性質や行動原理に基づき自発的に行動するきっかけを提供する手法で、本来は、「相手をひじで突く/そっと押す」という意味で、比喩的に「相手の行動に関してそっと変更を促す」ことを表す。「選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測可能な形で変える選択アーキテクチャのあらゆる要素」とされている。(厚労省 e-ヘルスネットより) |
「ナッジ」とはアメリカの行動経済学者であるリチャード・セイラー博士が提唱した理論で、人々が良い行動を選択できるように後押しをする仕掛けのことをいう。トイレを清潔に使ってもらうために男性用便器に描いた的(ハエのイラスト)が代表的な例で、ちょっとした仕掛けにより、人の行動に影響を及ぼす効果が期待される。電気通信設備などの構築、管理、保守などの業務を行っているNTT東日本 埼玉事業部では昨年、このナッジを採り入れた事故・災害防止の工夫を募集し、ナッジ理論コンテストを開催した。
ナッジ理論に着目した企画を立ち上げたのは昨年4月。運営に携わった同社埼玉事業部・通信インフラデザイン部の田口哲也チーフは、「従来からの安全の取組みによって事故件数が減少しているが、ゼロにはなっていない。これまでの取組みを継続しつつ、別のアプローチを考えるなかでナッジ理論の活用を発案した」と、背景を説明する。
作業中に起こった過去の事故事例をみると、早く終わらせなければという焦りなど、普段からのルール順守や作業マニュアルの展開だけではどうしても防ぎ切れない心理的、環境的な要因があったという。
同部の與語竜平課長は、「無意識下でも思わず安全な行動をしてしまうナッジ理論に基づいた行動変容が、安全のラストワンマイルの解決に生かせると考えた」と話す。グループ会社であるNTTデータ経営研究所ではナッジ理論を使って社会的な課題を解決する活動を推進しており、社内研修で同研究所の専門家による勉強会を受講する機会があった。そこで、まずは、運営メンバーがナッジ理論の基礎を学び、その後、埼玉、栃木、群馬、長野、新潟の各エリアで勉強会を開催。年末の安全大会(関信越安全スタジアム)に向け、各事業部、協力会社から作品を募集したという。
ジャッキベースに「的」を描く
初回となった昨年度は、事故防止以外にもゴミの分別やトイレを清潔に使用する工夫など、社内と協力会社からフリーテーマでアイデアを集めた。図1は、…
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