2024年の安全衛生ニュースを振り返る(1) 地震復旧作業の労災に注意 解体工事でリスク高まる
能登半島地震や羽田空港での旅客機衝突炎上事故など、ショッキングなニュースで幕を開けた2024年。労働安全衛生分野の動向をみると、化学物質管理者と保護具着用責任者の選任がスタートや、注文者による個人事業主の保護措置を強化するなどの動きがあった。厚労省の集計(令和5年確定値)では労働災害死亡者数が過去最少を記録する一方で、休業災害は3年連続増加で、増加傾向に歯止めがかかっていない状況が明らかになった。労働者の高年齢化による転倒や腰痛の増加、未熟練者、外国人、小売業、社会福祉での労災防止などが依然として課題に挙がっている。
墜落制止用器具の確実な使用を
石川・能登半島を中心に発生したマグニチュード7.6の地震を受け、厚生労働省は災害の復旧工事における労働災害防止対策徹底を建設業の関係団体に要請した。地山が崩れやすくなっている可能性がある箇所での土砂崩壊災害などが懸念されることから、作業箇所・その周辺の地山について、形状、地質と地層の状態、含水と湧水の状態などを事前に十分調査するよう求めたほか、木造家屋など低層住宅の改修工事などで作業床の設置が困難な場合は、墜落制止用器具などの取付設備を設置したうえで、同器具を確実に使用して墜落・転落災害を防止するよう求めている。
また、環境省と連名で、被災地で行われるがれきの処理や建築物の解体・改修工事での石綿飛散対策、労働者への石綿ばく露対策を徹底するよう石川県などの労働局と自治体の担当部局宛てに通知している。
協議会立ち上げ現場巡視を強化
復旧復興工事の本格化を受けた6月から、石川労働局と能登地区を管轄する労働基準監督署が工事中の労働災害防止の取組みを強化している。石川労働局が政労使による現場パトロールを実施し、土砂崩壊や重機災害、熱中症などへの注意を呼びかけるとともに、能登地域を管轄する穴水労基署、七尾労基署では工事発注者や建設業関係団体を招集し協議会を設立。定期的な巡視や事業者への講習会を開催して、安全対策の好事例などを水平展開するなど情報共有を密にしている。復旧復興工事では死亡災害も発生しており、冬にかけてより注意が必要になるとした。
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