解体工事事故防止が急務 厚労省はガイドライン策定へ 技術者資格要件を検討 国交省
高度経済成長期以降に整備されたインフラ・建築物の老朽化で解体工事量の増加が見込まれるなか、国土交通省や厚生労働省が安全な施工確保に向けた対応に動き出している。
国交省では、建設業法改正で業種区分に「解体工事」が加わることを踏まえ、解体工事業に求める資格の検討を開始した。現行の建設業法では、「とび・土工工事」で、主任技術者に建設機械施工技士1級や地滑り防止工事士などの資格者配置が定められているが、解体工事業に対しても要求する資格要件を新たに設定する。また、既存の資格や試験が解体工事の技術者に求める技術力を評価できているかも検討していく。
解体工事現場で発生した事故をみると、今年4月に神戸市内のビル解体現場で、つかみ機から鉄骨が抜けた反動で鉄骨が道路側の足場に倒れ、通行人2人が崩落した足場に巻き込まれて重軽傷を負った。また、8月には東京都内で通行人1人が死亡する事故が起こっている。
一方、作業者が巻き込まれる労働災害も後を絶たない。管内に多数の解体工事現場がある東京労働局によると、昨年1年間で解体工事に関連した労働災害は98件。建築物の崩壊倒壊やトラックや屋根、足場からの墜落が目立つという。
厚生労働省は解体工事の災害防止を重点のひとつとしており、来年度以降に災害防止のためのガイドラインを示す予定だ。
中央労基署では災防講習会開催
東京・中央労働基準監督書(村田泰昌署長)は9月17日、同労基署会議室で「解体工事現場における労働災害防止講習会」を開催した(写真)。同労基署管内では、再開発工事が盛んで解体工事が増加し、それに伴う労働災害が増えている。解体工事現場で仮囲いが倒壊し、通行人が下敷きになって死亡した災害は社会的にも大きな注目を浴びた。
講習会では同労基署安全衛生課の田中三雄課長が「解体現場の安全管理」について解説。基本的な安全対策を示すとともに最近起きた災害事例の発生状況と対策などを説明した。