福井の膀胱がん発症 長期間皮膚から吸収 厚労省が最終報告
厚生労働省は、福井の化学工場でオルト-トルイジンなどの芳香族アミンを取り扱う作業に従事する労働者5人が膀胱がんを発症した問題で、内側がオルト-トルイジンに汚染されたゴム手袋を通じて「長期間にわたり労働者の皮膚から吸収(経皮ばく露)していたことが示唆された」とする最終報告書を発表した。
調査手法は、労働者への聞取りと、同工場で労働者に保護具を着用させたうえでの作業の再現による過去のばく露量の測定。
それによると、オルト-トルイジンを含有する有機溶剤でゴム手袋を洗浄し、繰り返し要することを多くの労働者が行っていたことや、夏場は半袖の化学防護性のない一般的な服装で作業していたことなどが判明し、オルト-トルイジンに皮膚接触する機会があったものとの見方を強めた。
さらに、終業前と終業後にそれぞれ尿中代謝物を検査した結果、オルト-トルイジンが増加しており、ゴム手袋に付着していたオルト-トルイジンの量と終業前後の労働者の尿中のオルト-トルイジンの増加量に関連がみられたとした。
これを踏まえ、「作業に使用したゴム手袋をオルト-トルイジンを含む有機溶剤で洗浄し、再度使用することを繰り返し行ったため、内側がオルト-トルイジンに汚染されたゴム手袋を通じオルト-トルイジンに皮膚接触し、長期間にわたり労働者の皮膚から吸収(経皮ばく露)していたことが示唆された」と結論付けた。
一方で、「ばく露限界量を超えるような経気道ばく露があることの確認はできなかった」としている。
オルト-トルイジンの取扱いが完全自動化されていない職場で、今後どのようにばく露防止のためのリスクアセスメントを実施すればよいか研究を進める必要があるという。