裁量制不適正運用 企業名公表で基準 厚労省通達
厚生労働省はこのほど、裁量労働制の不適正な運用が複数の事業場で認められた企業のトップに対する都道府県労働局長による指導の実施と、企業名の公表を行う場合の手続きを定めた。複数の事業場を持つ大企業が対象だ。裁量労働制の対象労働者のおおむね3分の2以上が対象業務以外の業務に従事しており、かつ賃金不払残業をはじめとする労働時間関係違反がみつかるなど3条件を満たすケースが「不適正な運用実態」に当てはまるという。
具体的には、「裁量労働制の対象労働者のおおむね3分の2以上について、対象業務に該当しない業務に従事していること」が1つ目で、対象業務以外の業務に従事している労働者の「おおむね半数以上について、労働基準法第32・40条(労働時間)、35条(休日労働)または37条(割増賃金)の違反が認められること」が2つ目だ。これらの労働者のうち1人以上に「1カ月当たり100時間以上の時間外・休日労働が認められること」が3つ目となっている。
本社管轄の都道府県労働局長による指導では、「不適正な運用実態」が組織的に複数の事業場で確認された場合に、その企業が裁量労働制を相当数の労働者に適用しているときは、代表取締役など経営トップを労働局に呼び出し、局長から直接指導書を交付して指導するとした。
昨年12月28日に閣議決定された「労働施策基本方針」を踏まえたもので、監督指導に対する企業の納得性を高め、労基法など関係法令の順守に向けた企業の主体的な取組みを促す狙いがある。
これまでも監督指導の結果、違反状況が法の趣旨を大きく逸脱しているだけでなく、「これを放置すると全国的な順法状況に悪影響を及ぼす」とされるものについては、都道府県労働局長が企業の幹部に特別に指導を行っている。今回、この手続きを基準なども含めて明確にした。