協成建設工業ほか事件(札幌地判平10・7・16) 出向者がうつ病で自殺 遺族が損害賠償の請求 過労原因と、出向先に責任

1999.02.01 【判決日:1998.07.16】
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今や避けられない精神疾患の“管理”

筆者:弁護士 井上 克樹

事案の概要

 本件は、札幌建設運送事業協同組合(以下、出向元という)から、協成建設(以下、出向先という)に出向していた出向社員が、出向先における平成7年8月から翌年3月までに従事した国道建設工事における長時間労働によって「うつ病状態」となり、この結果、平成8年3月10日自殺したとして、遺族である原告らが、出向元及び出向先に対して、安全配慮義務違反等を理由に損害賠償を提起、出向先に約9200万円(利息を除く)の損害賠償責任が認められた事案である。

 判決の認定によれば、本件工事が遅れたことなどにより徐々に帰宅時間が遅くなり、休日出勤をするようになった。平成7年12月以後時間外勤務が急激に増加し、被告らが認めている限りでも、1日平均2時間を超え、平成8年2月及び3月には1日平均3時間30分を超える時間外勤務をしたほか、平成7年12月以後、31日の休日中16日間休日出勤をしていた。

 このため、被災者は、平成7年1月頃には、体重が約10キロ減少し(元は、身長173センチ、体重81キロ)、周囲の者から顔がどす黒いと言われ、「同月27日、高沢胃腸科内科医院で診断を受け、その後、同月29日、同年2月6日、同年3月2日に同院で診断を受けた。太郎(仮名)は、その際、全身の倦怠感、体重減少、不眠を訴え、仕事がうまくいかないことで悩んでいる旨述べた。太郎は、同医院の診断では、特に異常所見がない旨告げられ、不眠を解消する睡眠薬の処方を受けた」。

 しかし、工期内に完了することが困難であることや擁壁の出来の悪いことを気に病み、平成7年12月中旬、翌年3月9日頃、「本当に首をくくらなければだめだなあ」等と述べ、「大変申し分(ママ)けないと思っています。仕事をやっていて何がなんだか分からなくなってしまいました。私の管理能力のなさを痛感しています」等の遺書を残して自殺した。

判決のポイント

 本件の争点は、判決によると、…

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平成11年2月1日第2235号13面 掲載
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