厚生会共立クリニック事件(大阪地判平10・3・25) 元院長が看護婦等を引抜き、通院患者をも勧誘 雇用契約上の信義則違反に
1999.02.22
【判決日:1998.03.25】
禁止規定なくても 社会的相当性逸脱
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
X医療法人は、平成6年4月28日、医師のYを雇用し、Xの経営する共立クリニック(大阪市中央区)の院長として勤務させていた。共立クリニックでは、平成7年3月1日時点で、87名の患者が人工透析のため通院していた。Yは、同年1月23日付けで、同年2月28日をもってXを退職する旨の届出を提出し、同日、退職したが、同年3月1日、大阪市中央区において、Aクリニックを開設した。
共立クリニックにおいては、①平成6年12月から平成7年2月にかけて、技師のSほか、婦長のMをはじめ13名の看護婦全員及び事務職員1名が退職届を提出し、共立クリニックを退職したが、それらのうち看護婦12名、事務職員1名及びSほか2名の技師がAクリニックに採用され、また②同年3月31日、通院患者のうちの46名が一斉に治療を中断し、翌4月1日からAクリニックに転院した。
そこでXは、①については、Yがこれらの職員に共立クリニックからの退職やAクリニックへの就職を勧誘したことによって発生したものであり、そのため診療体制に壊滅的ともいえる打撃を受け、診療業務の継続に重大な影響が生じ、②については、Yの不当な勧誘行為に起因したもので、患者数が激減するという事態が生じ、多額の損害を蒙ったとして、Yに対し損害賠償を求め提訴した。
判決のポイント
Xの就業規則には、…
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平成11年2月22日第2238号13面 掲載