大通事件(大阪地判平10・7・17) 得意先従業員への暴言・誹謗を理由とする解雇? 解雇権の濫用とはいえない
休職処分に「辞めたるわ」と飛出す
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、Y社に平成7年2月に雇用され、Y社の得意先K社へ定期的に線状鋼材を運搬、荷積、荷降する業務に従事していたが、平成8年8月23日、K社構内で同社の従業員Mに対し、Mに明確な落ち度もないのに自らの思い込みから、「殺したろか」等の暴言を吐いて脅迫し、流し台を蹴って破損させたうえ、K社の管理職らに対しても司が上司なら部下も部下や」などと誹謗する発言をした。
そこで、Y社のT常務はXに対し、同月26日午後7時頃XのK社における言動は、著しく不穏当なものであったとして、1週間の休職処分を申し渡したが、Xは、「K社側が処分されないのは不公平だ。一方的に俺だけが処分されるくらいなら、会社を辞めたるわ」と言って、同僚の制止を振り切りY社の事務所を出て行った。その後、Xは、同年9月4日、Z労働組合の幹部らとともにY社を訪れ、同労組への加入通知書及び現場復帰を求める旨の要求書をY社に提出したが、Y社は、同月5日付け文書をもって、Xに対し、同年8月27日にXの退職申出を承諾したこと、仮にそうでないとしても、右文書によりXを解雇することを通知した。
そのため、Xは、退職していないこと、Y社が解雇したことが解雇権乱用に当たり無効であることを理由として、裁判所に対し、雇用契約上の地位の確認を求めて提訴した。
判決のポイント
1 労働者による一方的退職の意思表示は、…
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