日進工機事件(奈良地決平11・1・11) 企業廃止で全員解雇 営業継承企業との関係は 偽装解散と認め解雇無効に
継承企業に地位保全と給料仮払いを
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
Xらは、訴外A会社の社員であり、平成10年5月1日に組合を結成し、上部団体に加盟している。A会社は、土木建設基礎工事用機械器具の製造および加工を目的とする会社であり、Y会社は、昭和61年11月27日に設立された株式会社でありA会社が製造したジョイントと、スクリューと呼ばれる器具を取付加工し、これを製品として販売する会社で、A会社の工場と同一の敷地内にその工場等がある。Y会社の代表取締役Kは、A会社の実質的な経営者でもある。A会社は、業績悪化を理由に、同社の全業務を廃止し企業の廃止を決定したとして、Xら従業員を全員解雇し、その後同社の株主総会において解散の決議がなされ、同日付で会社解散の登記がなされた。Xらは、A会社の営業用資産を不動産を除いて全てY会社が譲り受けており、Y会社への営業譲渡があったとして、A会社の本件解雇は企業閉鎖を偽装したものでありY会社がXらとA会社との間の雇用契約上の地位を引き継ぐべきとして、Y会社に対して地位の保全と賃金の仮払いを求めて仮処分の申立てに及んだ。
奈良地裁は、XらのY会社の地位保全と本案判決までの給料仮払いを認容した。
決定のポイント
A会社の業績不振については、これを裏付ける証拠に欠け、売上から経費を控除した営業損益の部分についてはなお黒字を維持していたと認められる。A会社の資産のうち不動産の譲渡先はK本人またはKの親族であり、A会社の営業用資産は、…
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