京王自動車事件(東京地判平10・11・24) 出勤停止命令を発した後に懲戒解雇 二重処罰か 暫定措置で処罰ではない
労務指揮権に基づく適法な業務命令
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、Y社にタクシー乗務員として勤務していたが、平成9年6月21日午後8時40分頃、乗務中に同僚の乗務員との間で、無線ルール違反の有無をめぐってトラブルになり、同僚乗務員のタクシーのエンジンキーを抜き取って乗務できないようにした。そのため、Y社の府中営業所のA所長はXに対し、同月27日付けで翌28日からの出勤停止を命じた。
その後、Y社は、7月1日、本社において、Xから事情聴取をし、同月7日付けで、Xを懲戒解雇した。
これに対し、Xは、Y社A所長が右懲戒解雇に先立ち出勤停止命令を発したことは、Y社の就業規則79条4項による懲戒処分であるから、右懲戒解雇は二重処罰に該当し無効であり、また本件のような軽微な規律違反に対し懲戒解雇をもってのぞむことは、懲戒権の濫用であって無効であると主張して、Y社の従業員の地位にあることの確認および右地位の継続を前提とする懲戒解雇の日からの未払賃金の支払いを求めて提訴した。
判決のポイント
1 Y社は、Xの出勤停止期間について、Xの実際の7月分の勤務実績による営業収入を基礎として営業収入相当額を算定してXが乗務した場合と同程度の給与を支払っており、Xが出勤を停止され乗務できなかったことによる賃金の不支給はないものと同視できる。したがって、Y社のした出勤停止は懲戒処分ではなく、調査又は処分を決定するまでの前置措置として就業を禁止した業務命令にすぎないと認められ、Xの主張は理由がない。…
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