大器事件(大阪地判平11・1・29) 在職中の懲戒解雇事由をもって退職金を不支給 背信性大きく正当と認める
1999.08.09
【判決日:1999.01.29】
望ましい具体的な不支給事由の明定
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、昭和48年3月、家具等の製造、販売等を業とするY社に雇用され、主として営業を担当し、平成5年6月からは営業課長、平成8年当時は物資三課の課長職の地位にあった。Y社は、同年12月頃からXに背任行為があるとの情報を得て調査を始め、平成9年2月初旬頃、Xに対し質問したが、Xはそれを否定、さらに同年5月1日、再度、Xに質問したが、Xはあらためて否定した。そこで、Y社は、Xに対し、輸入等の営業部門から倉庫管理部門への配置転換を命じたところ、Xは、同年5月末頃、Y社に対し退職届を提出した。その後、Y社はXに対し、同年9月13日到達の内容証明郵便で、Xを同年6月30日付で遡って懲戒解雇する旨の通知をした。
Xは、これを不服としてY社の懲戒解雇は無効であるうえ、既に任意退職しているから、退職金の支払いを請求するとして提訴した。
これに対し、Y社は、Y社の退職金規程3条1項に「背信行為など就業規則に反し懲戒処分により解雇する場合は退職金を支給しない」と規定されているので、Xには退職金請求権は生じていないと反論した。
判決のポイント
本来、懲戒解雇事由と退職金不支給事由とは別個であるから、Y社の右退職金規程のように退職金不支給事由を懲戒解雇と関係させて規定している場合では、その趣旨は、現に従業員を懲戒解雇した場合のみならず、…
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平成11年8月9日第2260号13面 掲載